ミア・ハンセン=ラブ監督『EDEN/エデン』は、90年代以降のパリのクラブシーン “フレンチタッチ” における青春を描いた作品です。監督の兄で元 DJ、現在は作家のスヴェン・ハンセン=ラブの半生をモデルに、ヒットチューンの懐かしい音とともに当時の雰囲気がスクリーンで蘇ります。主人公ポールを演じ『フランス映画祭2015』で来日したフェリックス・ド・ジヴリさんにお話をうかがいました。
“フレンチタッチ” の時代と現在のパリ。
ー主人公のDJ ポールは、“フレンチタッチ” のミュージック・シーンの一端を担った人物として描かれています。演じるフェリックスさんは、制作チーム『Pain Surpurises(パン・シュルプリーズ)』としても活動されています。ユニークな楽曲やミュージック・クリップ、CM、短編映画を作っていて、今のパリのカルチャーシーンを作るひとりであると思います。新世代クリエーターとして90年代のパリと現在のパリは似ているところがあると思いますか?
フェリックス・ド・ジヴリ 今でもパリのクラブは90年代に近いところはあるけれど、ちょっと違う。新鮮さや、発見というところが違うと思います。
90年代のクラブシーンはとてもホットな感じ。エレクトロ・ミュージックにしても、アメリカ、イギリス、ドイツから探して来たり新しいものを発見しようというムーブメントがあったと思います。現在は、確かに新しいものを求める方向性はあるにはあるが90年代ほどでなないような気がします。なんというか、新たな発見が少ない。僕もエンターテインメント集団をやっていて、新しいものを見つけようとする方向であるとは思いますが。
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エンターテインメント集団
『Pain Surpurises(パン・シュルプリーズ)』の創始者トリオ。
ーフェリックスさんが活動している『Pain Surpurises(パン・シュルプリーズ』とはどのようなチームでしょうか。活動の内容を教えてください。パリ政治学院のホームページ フェリックスさんの人物紹介によるとフェリックスさん、そのほかエティエンヌ・ピケティ Etienne Pikettyさん、ジャック・オーベルジェ Jacques Aubergerさんがメンバーとあります。
フェリックス・ド・ジヴリ エティエンヌと僕はリセからの親友で、ジャックはエティエンヌのいとこです。”Pain Surpurises(パン・シュルプリーズ” というのは、パーティなんかでよく出てくるフィンガー・フードのことでキュウリやサーモンなどの三角サンドイッチです。(パンで作ったボックスに入っていて)何か出てくるか楽しみなサプライズのあるパン。そこからネーミングしました。
“Pain Surpurises”はアーテイスト、プロデューサー、技術者の3つの要素をひとつにする役割を担っていて各自が持ち寄ったアイディアから何かを作ろうとしています。音楽、ビデオクリップ、短編などを作っていて、すでに完成したものを持ってきた人がいたら、それを紹介することもしています。
ー制作、宣伝ということでしょうか。ジャックさんは、ルックスもビデオ・クリップもユニークですね。
フェリックス・ド・ジヴリ ジャックの “Tout est magnifique” のクリップは僕が制作・監督・編集したものです。ジャックのこの髪型はですね、当時パリではサイドを短くするスタイルが流行っていて、その逆をやろうということでこうなったのです。(笑)


”Cheers”が活躍するパリから世界に羽ばたいていくことになるダフト・パンク ギイ(アルノー・アズレイ)とトマ(ヴァンサン・ラコスト)のエピソードも描かれる。

ダフト・パンクのトマの家での仮装パーティにて。ポールに気があるルイーズ(ポーリーヌ・エチエンヌ)とポールの親友でイラストレーター志望のシリル(ロマン・コリンカ)。


“Cheers”はクラブシーンで有名になり、ついにはNYでもプレイする。


俳優、制作、監督……
興味があることは全部やっていきたい。
ーそのほか『Pain Surprises』はソックスブランド『Burlington』や『Tupperware』のCMも制作されているようですが?
フェリックス・ド・ジヴリ その通りです。『Burlington』は、裸の男が靴下だけ履いているが登場する”It’s matter of detail”と、”“Mom, can you sock me please ? ” というキワドイものなど全部で3種類作りました。スキャンダラスで話題になりましたが、売上は落ちちゃったかもしれないと思います。
ーフェリックスさんはパリ政治学院というミッテラン、シラク大統領を輩出したエリート校のご出身ですが、学業とともにこれらの『Pain Surprises』の刺激的な活動も行っていたのですか?
フェリックス・ド・ジヴリ6年前から活動しています。
ー『Pain Surpuris』の活動が今回の『EDEN/エデン』のポール役へとつながったのでしょうか。
フェリックス・ド・ジヴリ ダイレクトに繋がったということはありません。『Pain Surprises』で作品制作しているほか、音楽イベントなども企画している音楽に興味のある若者がいるということで、キャスティング・ディレクターのアントワネット・ブラはミア監督に話してくれたみたいです。オーディションの時はベッドから起き上がってバスルームへ行くというシーンをテストしたのですが、当時留学先のロスから飛んで帰って来たせいでベッドで本当に寝てしまった、それが自然でよかったみたいです。(笑)
ー今後も俳優を続ける予定ですか?
フェリックス・ド・ジヴリ うーん、元々特に俳優になりたかったわけじゃなくて、オーディションを受けて通って脚本をもらって読んでいるうちに興味が出てきたという感じです。俳優、制作、監督、興味があることは全部やっていきたいです。
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インタビューのおしまいに子供の頃から『Pain Surprises』のようなエンターテイメントがやりたかったのかと聞くとちょっと言葉に詰まっていましたが「子供の頃は船の設計士になりたかった」とのお答え。航海士ではなく、設計士というところが、フェリックスさん。
ロマンと実利を共に考えられる大器である、
と観察しました。
『EDEN/エデン』
2015年9月5日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
出演:フェリックス・ド・ジヴリ、ポーリーヌ・エチエンヌ、ヴァンサン・マケーニュ、ロマン・コリンカ、ユ-ゴ・コンツェルマン、ズィータ・アンロ、ヴァンサン・ラコスト、アルノー・アズレイ、ポール・スペラ、ユ-ゴ・ビアンヴニュ、セバスティアン・シャサーニュ、ローラン・カザナーヴ、アルシネ・カンジアン、グレタ・ガーウィグ、ブラディ・コルベ、ローラ・スメット、ゴルシフテ・ファラハニ、アーノルド・ジャービス、テリー・ハンター、トニー・ハンフリーズ、インディア
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラヴ
共同脚本:スヴェン・ハンセン=ラヴ
プロデューサー:シャルル・ジリベール
アソシエイト・プロデューサー:フランソワ・ピノー
撮影監督:ドニ・ルノワール
美術監督:アンナ・ファルゲール
音響:ヴァンサン・ヴァトゥー/オリヴィエ・ゴワナール
編集:マリオン・モニー
ファースト・アシスタント・ディレクター:マリー・ドラー
スクリプト:クレモンティーヌ・シェフェール
衣装デザイン:ジュディ・シュルーズベリー
キャスティング:アントワネット・ブラ/エルサ・ファラオン
ライン・プロデューサー:アルベール・ブラジウス
共同プロデューサー:パトリック・アンドレ
原題:Eden
字幕:斎藤敦子
字幕監修:梶野彰一
配給:ミモザフィルムズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:ユニフランス・フィルムズ
