ブルゴーニュ恒例のワインイベント、「栄光の3日間」、2015年はパリ同時多発テロでフランス中が騒然とする中での開催となりました。
そんな中、「ここでひるんではテロリストの思うつぼ。平常に暮らしたい」と敢えて散歩に出るパリ市民もいます。置かれた状況はパリとは違いますが、ブルゴーニュでも例年通り翌14日土曜日からのオスピス・ド・ボーヌの競売会をはじめとする「栄光の3日間」のお祭りは開催されました。
正直なところ、「ボーヌの人口の数倍の観光客が町に押し寄せるお祭りにテロリストが来たらどうなるんだろう、そもそも街に人がいないんじゃないか」……と私もずいぶん参加を悩んだのですが、試しに見てみようと思いきって街に出てみると例年と変わらずワイングラスを片手にしたホロ酔い気分の観光客があふれていました。(あんまり無邪気に飲んでいるので、不測の事態になったら大変!と思うくらい)

お祭り期間中はボーヌの至る所でワインショップやカーヴが特別テイスティングを実施しています。それは今年も変わりありません。写真はブシャール・エイネ・エ・フィス。毎年ワインとお料理のマリアージュにテーマを絞っていて、今年のテーマは「ワインとマスタード」でした。


毎年人気の特別テイスティングですが、今年はどうなるのかと心配していたらテロ翌日の土曜日は例年並みかそれ以上に大混雑だったそうです。
競売会当日の日曜午後も会場前の広場には生中継が見れるスクリーンが設置され、大勢の人で賑わっていました。

フランス国歌の「ラ・マルセイエーズ」をお聞きになったことはありますか?
革命時に誕生したということもあり、こころにしみじみ染みる「君が代」と違ってかなり猛々しく勇ましい曲です。この先はまったく個人的な感想ですが、君が代なら亡くなった方を悼む心情がより強くなりそうなところ、ラ・マルセイエーズでは立ち向かう決意のようなものを感じました。こんな状況でも競売会を実施した、テロに屈しない、というフランス人の意気込みのようでした。農耕民族と狩猟民族の違いもあるかもしれませんね。
日曜日のオスピス・ド・ボーヌの競売会に先立ち、前日にシュヴァリエ・ド・タストヴァン(ブルゴーニュ利き酒騎士団)が主催したシャトー・デュ・クロ・ド・ヴージョの晩餐会でも、アメリカ人がラ・マルセイエーズを斉唱したそうです。これにはフランス人が感激していました。
もちろん、テロの現場となったパリ東部とは状況は違いますが、フランス全体が落ち込んだままでないことを日本の皆さんにも知っていただけたらな……と思います。
ところで肝心のオスピスの競売会の結果ですが……。
史上最高の売却高を更新しました。ひと樽あたりの落札価格は、赤が16,676ユーロ(約218万円=7666円/本)で前年比27%増、白が21,429ユーロ(約280万円=9333円)で前年比33%増でした。

今年はテロ直後ということもあってより強気な価格になったという声もありますが、いずれにせよ庶民にはなかなか手が出ない価格になってしまいました。