テクノロジーと人間の関わり方を再考、
セクシャル・マイノリティのありようをテーマにした作品も。
『国立新美術館』をメイン会場に2月14日(日)まで開催中の『文化庁メディア芸術祭受賞作品展』。今年は世界87の国と地域から、4417作品と過去最高の応募総数を記録、その中から選ばれたアート、エンターテインメント、アニメ、マンガの4部門の受賞作品を中心に約120点が展示されています。
アート部門大賞受賞はCHUNG Waiching Bryan(英国)による『50 . Shades of Grey』。50段階の灰色のグラデーションを6つのコンピュータのプログラム言語で筆記。その額装作品が表に展示され、裏には各プラグラムで生成されたグラデーションのモニター画面を展示したもの。プログラム言語6つの変遷を作者自身の歴史を織り交ぜるという人間的なアプローチで表現したもの。
同部門優秀賞は長谷川愛 (日本)『(不)可能な子供、01: 朝子とモリガの場合』。実在の同性カップルの遺伝子情報から生まれる可能性のある子供の遺伝子情報を生成。それをもとに写真画像を制作、家族写真として発表したもの。NHKのテレビ番組と連動、カップルが子供の写真と対面するまでの道のりを捉えたドキュメンタリー映像も展示されています。
同新人賞のLorenz Pothast(ドイツ)『Communication with the future -The Petroglyphomat』は、これまで残されてきた古代人類の足跡の多くは石や岩に描かれた絵や、刻まれた言葉であった。今こそ未来に残すべきメッセージは石に刻まれるべきではないか? というアイディアで、コンピュータ制御の切削マシンと実際に使用して刻んだ岩などが展示されています。
エンターテインメント部門では音楽評論やバンド活動で知られる岸野雄一が子供のための音楽劇『正しい数の数え方』で大賞受賞。音楽演奏+演劇+人形劇の究極のステージ。フランス公演で大好評を博したステージが連日15:00から上演され豪華ゲストを迎えてのトークも合わせて楽しめます。
アニメーション部門大賞は思想家ドゥールーズ=ガタリの『千のプラトー』で展開される概念「リゾーム」を映像的に考察する作品、Boris Rabbe(フランス)『Rhizome リゾーム』。手描きの小さな微生物のような造形を作成、増殖させていく作業を積み重ね、大きなうねりを持った現象映像へ完成した短編大作。
マンガ部門大賞受賞は東村アキコ(日本)の自伝的マンガ『かくかくしかじか』のほか、優秀賞ヘテロ・セクシャルから見たゲイのカップルを描いた田亀源五郎(日本)『弟の夫』。
文化史の中では比較的若い歴史を持つ4部門における最先端の表現。今年はまたもう一歩、表現におけるデジタルとアナログの間のフィードバック、融合が推し進んでいるようです。『国立新美術館』のほか『TOHOシネマズ 六本木ヒルズ』でも関連上映、展示があります。この機会にぜひのぞいてみてください。


『第19回 文化庁メディア芸術祭受賞作品展』
会期:2016年2月3日(水)〜2月14日(日)
会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2 )ほかTOHOシネマズ 六本木ヒルズ、スーパー・デラックス、セルバンテス文化センター東京
国立新美術館は2月9日(火)休館、そのほかは10:00〜18:00までオープン、金曜は〜20:00、入場は閉館の30分前まで。会場によって開館、休館日が異なります。
詳細はホームページにて。
入場料:無料
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会