データというのはあくまでもリサーチをした過去の時点のものであって、状況は刻一刻と変化しています。しかし私たちは未来を占おうとするためにデータを使っている訳ですから、そこにはもともと無理があるのです。
マーケティングの専門家の中にも、消費者ニーズを捕捉しようとどんなに手間を掛け、知恵を働かせてリサーチ設計をしようとしても、そもそも消費者は自分の欲しいものをわかっていないし、また商品などの目に見える形になっていないものを提示してもうまくいかないということをおっしゃる方もいます。
樹: 確かにヒット商品といわれているものの中にはひょうたんから駒のようなものが多くあるっていうよ。
環: じゃあ、マーケティング・リサーチに莫大なお金をかけたにもかかわらず失敗した商品も多いってこと?
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失敗した事例を企業はあまり表に出したがらないのですが、確かにリサーチ設計が十分ではなかった、石橋をたたきすぎてタイミングを失ってしまった、といったこともあったかもしれません。しかし企業は意思決定のリスクを少しでも軽減するためにもマーケティング・リサーチは欠かせないのです。
定量調査の中には難しい数学を駆使するものも少なくないので、特に数学が嫌いで文系に進んだような学生さんの中には抵抗を感じる人もいるかもしれません。データ・サイエンティストというのが注目されていると聞くと数学専攻の理系エリートのようなイメージがありますが、今はエクセルでたいていの分析手法が扱えるようになっています。定性情報などは文系も理系も関係ありません。文系、理系問わず、特に若い皆さんは全員がデータ・サイエンティストになってほしいと思います。
しかし企業にとって一番大事なのは収益を上げること、そして損をしない経営判断をすることですから、やるべきことを尽くした上で、最後は勘と経験と度胸をもって意思決定をしなければならないのです。