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土屋孝元のお洒落奇譚。パリのお気に入りアドレス パッサージュ、ふたつ。

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パリのお気に入りアドレス パッサージュ、ふたつ。

土屋孝元のお洒落奇譚。

パッサージュ『ギャラリー・ヴィヴィエンヌ』のエントランス。パリで一番美しいと言われるパッサージュの美しい天井と壁、床の風景です。

パッサージュ『ギャラリー・ヴィヴィエンヌ』のエントランス。パリで一番美しいと言われるパッサージュの美しい天井と壁、床の風景です。

パリに行くと必ず訪れるパッサージュ
「ギャラリー・ヴィヴィエンヌ」

パリにはパッサージュと呼ばれる 日本で言うところのアーケード商店街があります。正確には印象はちょっと違うのですが……。

作られたのは時代的に19世紀末から20世紀初頭。アールヌーボー様式時代に作られ、今も残るのはパレロワイヤルの北側に数カ所くらいです。

僕は、そのパッサージュのひとつ『ギャラリー・ヴィヴィエンヌ Galerie Vivienne』にはパリを訪れるたび 必ず足を運びます。まず入口の装飾が素晴らしい。メトロ入り口のアールヌーボー様式のエントランスが30数年前のパリにはたくさんありましたが、今ではメトロの改装工事により少なくなりました。

それと同じ様なアールヌーボー様式の入り口の装飾、中に入ると壁から床のタイルの素晴らしいこと、天井のガラスからの光がまた綺麗なのです、誰が撮っても美しいポートレイトが撮れる? かな。

パッサージュ・ヴィヴィエンヌについてもう少し詳しく。ここには布地屋さん、古本屋、時計の修理屋、地図屋、サロン・ド・テ、インテリアショップ、帽子屋さん、などなど、このようなお店が並んでいます。

修理屋さん、帽子屋さん
お気に入りのお店がたくさん。

僕は時計の修理屋さん『Garde-Temps』にて時計ベルトを付け替えてもらうことが多いですね。東京では銀座4丁目角の有名時計店でもスイスのジャガールクルトへ発注してから約2ヶ月くらいは待たされて、届いたベルトの色が今いち気に入らないなんてコトもあるのですが、ここでは気に入った色があればその場で10分くらいできちんと付け替えてくれます。お爺さんがひとりでやっている修理屋さんで価格的にもリーズナブルでとても助かります。

地図屋さんもよく見に行くお店です、地図屋さんというか古本絵葉書の『Libralrie Jousseaume』。パリやヨーロッパの都市の地図がいろいろと揃っていてナポレオン3世以前の都市計画前のパリ全図とか、なかなか面白いのです。

帽子屋さん『Cellne Robert』でも以前 バスク帽、(ベレー帽)を購入しました、男が被って様になるベレー帽はなかなか見つからないのですが、ここのお店にはサイズや種類が豊富で自分にあったものが見つかりました。

本の背表紙。美しい本は見ていると気持ちが豊かになります。

本の背表紙。美しい本は見ていると気持ちが豊かになります。

オープンテーブルで休んでいるとやって来た
中年男性。彼の職業は……。

ある時、このパッサージュにあるサロン・ド・テ『APriori The』のオープンテーブルで休んでいるとこのカフェに中年の男性がやって来て、おもむろにパソコンを開き仕事を始めました。多分編集者か、そのようなもの書きの仕事をする人なのかなと、何気なく観察していると、そこへ待ち合わせの老年、いや中年の男性がやって来て打ち合わせをしていました。たぶん これから食事にでも行く相談でしょうか。しばらく話してからまとまったのか何処かへ出て行きました。

オープンカフェで休んで観察していると、いろいろな人達がこのパッサージュを訪れているので面白いのです。いちばん人数も多いのはアメリカ人の団体でパッサージュを巡り観光するツアーなのかな? と思う一団です。天井や床のタイルを熱心に写真に収めていきます。

次に面白かった一団は、自転車でパッサージュ巡りをするツアーで、みなフランスの人達でした。この界隈にはパッサージュが幾つかあるのでそのパッサージュを巡るのでしょうね。パリではレンタル自転車システム『ヴェリブ Vélib’』があり誰でも使うことができ便利ですが、この人達は自前の自転車でした。

パッサージュの床は美しいモザイクタイル。

パッサージュの床は美しいモザイクタイル。

もうひとつ、お気に入りのパッサージュ
『パッサージュ・ディ・グランセール』

ここの並びと言ってもかなり歩くのですが『パッサージュ・ディ・グランセール Passage du Grand Cerf』と言うパッサージュもあります。ここにはレストランがたくさんありタイ、中華というかベトナミーズ、コリアンなどのエスニックレストランからのエキゾチックな匂いが漂っています。他には女性の靴屋さん、画材屋、洋服屋、雑貨屋さんが並んでいて少しだけ庶民的な雰囲気です。僕はここの画材屋さんで道具を買います、フランス製品の筆などは日本で購入するよりかなり安く手に入るのでとても重宝します。

ここの靴屋さんには女性ものが多いのですが、色や形がたくさんの種類があり、サンダルもイスラム風、モロッコ風の刺繍を施したものなど並んでいました。

このパッサージュの周りには靴屋さんが多く、昔は職人街で下町の雰囲気が残っていて風情があったのでしょう。日本では浅草橋あたりの雰囲気でしょうか、パリも街角ごとにがらりと変わります。

http://dacapo.magazineworld.jp/gulliver/155747/


会場は新宿NSビルへ。チョコレートの祭典『2015 サロン・デュ・ショコラ』開催。

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チョコレートの祭典『2015 サロン・デュ・ショコラ』開催。

会場は新宿NSビルへ。

sdc2015-01-2

バレンタインデー前のこの時期、毎年開催されるチョコレートの『サロン・デュ・ショコラ』。東京では、伊勢丹新宿店にての開催が通例でしたが、13年目の今年、気分も新たに会場を新宿NSビルへ移し、2015年1月21日(水)〜1月25日(日)の間に行われます。

今年のテーマは「ショコラ, パトリモワンヌ ユニヴェルセル 〜未来へのオマージュ〜」。パトリモワンヌ ユニヴェルセル Patrimoine Universel とは世界共有遺産のこと。ショコラを世界の人に幸福をもたらす、世界共有遺産として受け継いて行こうというものです。

人気ショコラティエの自慢のショコラをアソートしたセレクション・ボックスは、今年は3種。今年のテーマのネーミング 『Patrimoine Universel』はジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、クリスティーヌ・フェルベールら18名のショコラがいただけます。18個入り 9,990円。パッケージ表の耳を引っ張ると、パティシェたちの顔が……アナログ感が楽しいパッケージデザインになっています。そのほかのセレクション・ボックスはカカオへのオマージュを捧げる『Origine CACAO』、チョコレートの世界選手権大会の日本代表6名のボックス『ワールドチョコレートマスターズ』が。

参加シェフ:フランク・ケストナー、ジャン=シャルル・ロシュー、オテル・デュ・キャップ-エデン-ロック、クリスチャン・カンプリニ、フィリップ・ベル 、アルノー・ラエール、クリスティーヌ・フェルベール、フレデリック・アヴェッカー、ヴァンサン・ゲルレ、ダヴィド・カピィ、ティエリー・バマス、ユー ゴ&ヴィクトール、セバスチャン・ブイエ、ジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、ファブリス・ジロット、パティスリー・サダハル・アオキ・パリ、アンリ・ルルー

参加シェフ:フランク・ケストナー、ジャン=シャルル・ロシュー、オテル・デュ・キャップ-エデン-ロック、クリスチャン・カンプリニ、フィリップ・ベル 、アルノー・ラエール、クリスティーヌ・フェルベール、フレデリック・アヴェッカー、ヴァンサン・ゲルレ、ダヴィド・カピィ、ティエリー・バマス、ユー ゴ&ヴィクトール、セバスチャン・ブイエ、ジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、ファブリス・ジロット、パティスリー・サダハル・アオキ・パリ、アンリ・ルルー

参加シェフ:フランク・ケストナー、ジャン=シャルル・ロシュー、オテル・デュ・キャップ-エデン-ロック、クリスチャン・カンプリニ、フィリップ・ベル 、アルノー・ラエール、クリスティーヌ・フェルベール、フレデリック・アヴェッカー、ヴァンサン・ゲルレ、ダヴィド・カピィ、ティエリー・バマス、ユー ゴ&ヴィクトール、セバスチャン・ブイエ、ジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、ファブリス・ジロット、パティスリー・サダハル・アオキ・パリ、アンリ・ルルー

参加シェフ:フランク・ケストナー、ジャン=シャルル・ロシュー、オテル・デュ・キャップ-エデン-ロック、クリスチャン・カンプリニ、フィリップ・ベル 、アルノー・ラエール、クリスティーヌ・フェルベール、フレデリック・アヴェッカー、ヴァンサン・ゲルレ、ダヴィド・カピィ、ティエリー・バマス、ユー ゴ&ヴィクトール、セバスチャン・ブイエ、ジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、ファブリス・ジロット、パティスリー・サダハル・アオキ・パリ、アンリ・ルルー

参加シェフ:フランク・ケストナー、ジャン=シャルル・ロシュー、オテル・デュ・キャップ-エデン-ロック、クリスチャン・カンプリニ、フィリップ・ベル 、アルノー・ラエール、クリスティーヌ・フェルベール、フレデリック・アヴェッカー、ヴァンサン・ゲルレ、ダヴィド・カピィ、ティエリー・バマス、ユー ゴ&ヴィクトール、セバスチャン・ブイエ、ジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、ファブリス・ジロット、パティスリー・サダハル・アオキ・パリ、アンリ・ルルー

参加シェフ:フランク・ケストナー、ジャン=シャルル・ロシュー、オテル・デュ・キャップ-エデン-ロック、クリスチャン・カンプリニ、フィリップ・ベル 、アルノー・ラエール、クリスティーヌ・フェルベール、フレデリック・アヴェッカー、ヴァンサン・ゲルレ、ダヴィド・カピィ、ティエリー・バマス、ユー ゴ&ヴィクトール、セバスチャン・ブイエ、ジャン=ポール・エヴァン、パスカル・ル・ガック、ファブリス・ジロット、パティスリー・サダハル・アオキ・パリ、アンリ・ルルー

初上陸ショコラはブルゴーニュ地方 オクセールのオリヴィエ・ヴィダル
バスク地方 バイヨンヌのショコラ カズナーヴ。

日本初上陸ショコラティエはオリヴィエ・ヴィダル。ブルゴーニュ地方のオクセールでかわいいブティックを営んでいます。07年にMOFを取得。今回はフランスのお祝いごとにはつきもののエスカルゴを型どった、ショコラが登場します。そしてフランス バスク地方バイヨンヌの老舗、豆の焙煎からチョコレート作りの全工程「ビーン トゥ バー BEAN TO BAR」を語る上で欠かせないショコラ カズナーヴ。

オリヴィエ・ヴィダル

オリヴィエ・ヴィダル

オリヴィエ・ヴィダルのエスカルゴを型どったショコラ『オリヴィエ・ヴィダル エスカルゴ』7個入り 4,860円。

オリヴィエ・ヴィダルのエスカルゴを型どったショコラ『オリヴィエ・ヴィダル エスカルゴ』7個入り 4,860円。

『ショコラ カズナーヴ タブレット』各2,160円。

『ショコラ カズナーヴ タブレット』各2,160円。

また伊勢丹新宿店 本館地下2F 世界各国から集めたナチュラルアイテムで展開する美と健康のフロア『ビューティアポセカリー』もブースを出店。ナチュラル素材にこだわったチョコレートを販売します。イートイン、テイクアウトも例年の通り充実の『2015 サロン・デュ・ショコラ』。ショコラの最先端、未来形をぜひその場で味わってみて。

sdc2015-11
『ゾッター ナシス・ヴェジィミルクコレクション』  6個入り 1,650円 オーストリアのブランド。上質なフェアトレードカカオを使用し、「ビーン トゥ バー」を自前で行っています。白砂糖不使用。 sdc2015-12
『ノックス NOXプレミアムオーガニックチョコレート』30個入り 5,180円  乳製品や白砂糖を使用せず、すべてオーガニック原料のみで作ったカカオ70%含有のダークチョコレートが登場。「スーパーフルーツ」のアサイーとバオバブも配合。 sdc2015-13
チョコレート・オルガニコ は2004年にスペイン・マドリードに設立された小さなチョコレート工房。ドミニカ産の有機カカオの豆の風味を引き立てつつ、フレーバー使いもユニーク。『チョコレート・オルガニコ サル・デ・イビザ』、『チョコレート・オルガニコ オレンジ&ペッパー』各346円。

『2015 サロン・デュ・ショコラ』

会期:2015年1月21日(水)〜1月25日(日) 
時間:10:00〜20:00
会場:新宿NSビル地階=イベントホール
東京都新宿区新宿3-14-1
問い合わせTEL :03-3352-1111(伊勢丹新宿店 大代表)

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『2015 サロン・デュ・ショコラ』全国の会場、会期

京都
会期:2015年1月28日(水)〜2月14日(土)
時間:10:OO〜20:00、最終日は午後6時終了
会場:ジェイアール京都伊勢丹10階=催物場

大阪
会期:第一弾 2015年1月28日(水)〜2月3日(火)、第2弾 2月4日(水)〜14日(土)
時間:10:OO〜20:00
時間:最終日は午後7時終了
会場:LUCUA9階 LUCUAホール

福岡
会期:2015年1月29日(木)〜2月14日(土)
時間:10:OO〜20:00
会場:岩田屋本店本館7階=大催事場

名古屋
会期:2015年1月28日(水)〜2月3日(火)
時間:10:OO〜20:00
会場:名古屋栄三越 7階催物会場

仙台
会期:2015年2月3日(火)〜2月15日(日)
時間:10:OO〜20:00
会場:仙台三越本館7階ホール

札幌
会期:2015年1月31日(土)〜2月14日(土)
時間:10:OO〜20:00、最終日は午後〜17:00終了
会場:丸井今井札幌本店 大通館9階催事場

http://dacapo.magazineworld.jp/news/156091/

東京都庭園美術館開館30周年記念展 モダニズムを乗り越えた様式美 『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』

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モダニズムを乗り越えた様式美 『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』

東京都庭園美術館開館30周年記念展

ウジェーヌ・ロベール・プゲオン『蛇』1930年頃 © Musée La Piscine(Roubaix), Dist. RMN-Grand Palais / Arnaud Loubry / distributed by AMF, Achat de l’Etat 1930

ウジェーヌ・ロベール・プゲオン『蛇』1930年頃 © Musée La Piscine(Roubaix), Dist. RMN-Grand Palais / Arnaud Loubry / distributed by AMF, Achat de l’Etat 1930

昨年11月リニューアル・オープンした東京都庭園美術館にて、1月17日より 開館30周年記念展『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』が開催。

本館 旧朝香宮邸の建築スタイル アール・デコの建築に迫った前展の流れを汲みながら本展覧会ではアール・デコの生まれた時代背景、その成り立ちを当時活躍した作家たちの作品を通して紹介します。

アール・ヌーヴォーの隆盛後、ドイツやオーストリアからのモダニズムのデザインの新潮流が入ってきた1910年前後のフランス。装飾美術界では古典主義に立ち返り新しい時代のスタイルを創出しようとする動きが生まれました。1925年に開催されたアール・デコ博覧会で確立したといわれるこの様式美の作品、彫刻、家具、磁器、ガラス、ドレス、絵画など33作家、約80点を展示します。

アール・デコの生まれた1920年代は、ローリング・トゥエンティーズのまっ只中。フランスでは狂気の時代(années folles)と呼ばれ、ファッションや音楽、文学など、様々な文化が繚乱し世界を牽引しました。その熱狂の時代の息吹、美学にぜひ触れてみて。

開催期間中には関連企画としてシンポジウム、レクチャーほか、リニューアルで新設された新館では『TTM IGNITON BOX “新しい何かが生まれる美術館へ”』と題して映像、音楽、メディアアートの公演が。(ProgramDのみ本館)。ナム・ジュン・パイクの歴史的公演の再演、世界の音から新世界を創出するマイア・バルーのライブなど。こちらも合わせて新しい庭園美術館を体験してください。

ジュール・ルルー キャビネット『花火』1938年 ©Mobilier national / Isabelle Bideau 3.ルネ・ラリック ダイニング用センターピース『二人のナイト』1920年 箱根ラリック美術館蔵

ジュール・ルルー キャビネット『花火』1938年 ©Mobilier national / Isabelle Bideau 3.ルネ・ラリック ダイニング用センターピース『二人のナイト』1920年 箱根ラリック美術館蔵

ルネ・ラリック ダイニング用センターピース『二人のナイト』1920年 箱根ラリック美術館蔵

ルネ・ラリック ダイニング用センターピース『二人のナイト』1920年 箱根ラリック美術館蔵

オーギュスト・ハイリゲンシュタイン『花瓶』1933年 ©Les Arts Décoratifs, Paris. / Jean Tholance

オーギュスト・ハイリゲンシュタイン『花瓶』1933年 ©Les Arts Décoratifs, Paris. / Jean Tholance

東京都庭園美術館 本館

東京都庭園美術館 本館

●関連企画
記念シンポジウム「フランスにおけるアール・デコの再評価―3つの美術館の試み」
日時:2015年1月17日(土)14:00–16:00
会場:新館ギャラリー2
定員:150名(申込不要)
講師(予定):ドミニク・ガニュー(パリ市立近代美術館チーフ・キュレーター)、エルベ・カベザス(アントワーヌ・レキュイエール美術館キュレーター)、クレール・ボワリオン
(30年代美術館キュレーター)

・記念講演会
1「反近代のフランス文学─第一次世界大戦期を中心に」講師:久保昭博(関西学院大学准教授)
2「1931年パリ国際植民地博覧会と驚異の美術」
講師:藤原貞朗(茨城大学人文学部教授)
2015年1月25日(日)、2月22日(日)それぞれ14:00–16:00、
会場:新館ギャラリー2
定員:各回150名(申込不要)

・映像×トーク「パリのアール・デコ建築をみる」
日時:2015年2月15日(日)14:00–15:30
会場:新館ギャラリー2
ゲスト:フローラン・ダバディ(スポーツ&文化ジャーナリスト)

・ギャラリーカンバセーション(対話による鑑賞)
日時:2015年3月6日(金)14:00–及び16:00–各回45分程度
会場:展示室内
定員:各回10名(申込不要)
講師:三ツ木紀英(アート・エデュケーター)

・「アンサンブル展示」(仮題)
日時:2015年2月28日(日)15:00–16:00
会場:新館ギャラリー2
ゲスト:祐真朋樹(ファッション・エディター)

●パフォーミング・プログラム
TTM: IGNITION BOX “新しい何かが生まれる美術館へ”

・ProgramA「ライヴパフォーマンスとしてのヴィデオアート」
2015年2月7日 (土 )
出演:阿部修也(アーティスト/エンジニア)、飯村隆彦(映像作家)、中嶋興(ヴィデオアーティスト)、河合政之(ヴィデオアーティスト)、浜崎亮太(ヴィデオアーティスト)、西山修平(ヴィデオアーティスト)、瀧健太郎(ヴィデオアーティスト)

・ProgramB 「Sprout:レンズ系とジェネ系の世紀、ふたつの黎明」2015年3月22日 (日 )前編/後編
2015年3月22日 (日 )前編/後編
1stsession:「ヴォードヴィルからアニメーションへ」(仮)細馬宏通、しりあがり寿、澤隆志2ndsession:「即興と計算によるグルーヴ」(仮)SjQ++、澤隆志
出演:細馬宏通(滋賀県立大学教授)、しりあがり寿(漫画家)、SjQ++(魚住勇太(ピアノ)米子匡司(トロンボーン)ナカガイトイサオ(ギター)アサダワタル(ドラム)大谷シュウヘイ(ベース)Kezzardrix(映像))

・ProgramC マイア・バルーLIVE
2015年3月28日 (土)、4月4日(土)、4月5日(日)
出演:マイア・バルー(ヴォーカル・フルート)、MinhPham(キーボード)、AnthonyFresneau(ドラム)、LeoKomazawa(パーカッション)、MichelleMichina(コーラス)

本館展示室内にて「幻想絶佳展」会期中毎日実施予定。
・ProgramD 「饗宴のあとアフター・ザ・シンポジウム」
演出・テキスト藤井光(美術家・映画監督)、テキスト深田晃司(映画監督)、音楽鈴木治行(作曲家)

東京都庭園美術館開館30周年記念展
『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』
30ème anniversaire du Tokyo Metropolitan Teien Art Museum Fantaisie Merveilleuse : Le Classicisme dans l’Art Déco français

会期:2015年1月17日(土)〜4月7日(火)
会場:東京都庭園美術館 本館+新館ギャラリー1
東京都港区白金台5-21-9
時間:10:00-18:00
休館日:第2・第4水(祝日の場合は開館、翌日休館)、展覧会準備期間

問合せ先:Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
入場料:一般1200円、大学生〔専修・各種専門学校を含む〕960円、中・高校生、65歳以上600円
小学生以下及び都内在住在学の中学生は無料
身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その介護者一名は無料

教育活動として教師の引率する都内の小・中・高校生および教師は無料(事前申請が必要)

第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料
前売り券e+(イープラス)にてオンライン販売

ドレスコード割引「Serpent 蛇 」メインビジュアル、Le Serpent にちなんで、蛇のモチーフや模様を身に着けて来館すると100円引き。(他の割引との併用はいたしません)

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団、東京都庭園美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、日仏会館フランス事務所
協賛:ライオン、清水建設、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜
協力:エールフランス航空
年間協賛:戸田建設株式会社

http://dacapo.magazineworld.jp/news/156079/

世界を驚かせる音楽教室 エル・システマのキセキ- 4 - 対話が生み出す、新社会支援組織の挑戦!

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対話が生み出す、
新社会支援組織の挑戦!

世界を驚かせる音楽教室 エル・システマのキセキ- 4 -

© 2014 by Peter Brune

© 2014 by Peter Brune

エル・システマとは今、世界を最も沸かせる指揮者グスターボ・ドゥダメルを生んだ驚異の音楽教育システム from ベネズエラ。シリーズ『世界を驚かせる音楽教室 エル・システマのキセキ』では世界のエル・システマをご紹介しています。第4回では日本のエル・システマの活動と、参加している人々を紹介します。

存在するが形ではない。有機的な組織づくり。

エル・システマジャパンは、エル・システマの音楽教育を日本で手がけながらも、有機的な社会支援組織を創造している点でもユニークだ。その特長は「人との対話」にありそうだ。

2012年3月、菊川穣さんは一般社団法人エル・システマジャパンを設立した。同年5月に相馬市と、7月にはベネズエラのシモンボリバル音楽財団と、協力協定を取り交わす。スピード感のある展開にみえるが、その実、現地に足を運んで顔を合わせ、相馬市のいろいろな人々と対話を重ねてきた。

設立の前年、2011年12月。相馬市での初めての会合は寒い夜だった。 日曜の相馬市役所に集まった職員有志と、菊川さんは話した。 「すべての子どもに楽器と教育を無償で与えよう」というエル・システマの理念は魅力的だ。だが誰がやるのか。お金はどうするのか。当時勤務していた日本ユニセフ協会を辞してまでこれをやるのか。「そのときはまだ夢物語でした」と菊川さんは当時を振り返る。菊川さんは国際支援活動ではいつも、地域主導の支援活動を貫いてきた。だからこそ、ベルリンフィル奏者と相馬の子どもの声に励まされてエル・システマジャパン設立を準備し始めた時、まず相馬市の教育委員会と対話を持った。日本の教育行政は往々にして保守的だ。行政と正面から向き合うことは、新しい仕組みづくりにゼロから取り組むのには、かえって遠回りだとする向きもある。だが菊川さんは、日本の地方の風土では、学校との協働は子どもにとって大切だと考え、市との協力協定を目指した。

エル・システマジャパン 代表理事 菊川穣さん。「子どもたちが、『楽しい!』と言って通える場所があればいい」。発足から間もなく3年。地域に寄り添う姿勢は、いまも変わりません。

エル・システマジャパン 代表理事 菊川穣さん。「子どもたちが、『楽しい!』と言って通える場所があればいい」。発足から間もなく3年。地域に寄り添う姿勢は、今も変わりません。

こうした流れから、エル・システマジャパンでは、オーケストラ活動とともに、学校支援活動も展開する。たとえば演奏家を学校に派遣する「音楽鑑賞教室」に取り組む。演奏家のストルツマン夫妻は来訪時、相馬市立大野小学校の体育館でも演奏している。 学校側の費用負担なく演奏家の派遣があれば、芸術専科教員の少ない小学校でも、授業の幅がぐんと広がるだろう。(「田んぼの真ん中の小学校にグラミー賞受賞クラリネット奏者がやってくる。」はこちら。

費用負担ゼロという点が着目されがちだが、特長は「質」にある。エル・システマの理念に共鳴して集まる奏者には、地域の人々と有機的に関わっていく姿勢が自然と備わっている。エル・システマジャパンは協定のもと、行政や学校など現場のニーズを汲みとり、奏者や演目の選定にも応えていく。菊川さんの対話の姿勢は、学校支援活動にも現れている。

存在するが形ではない。有機的な組織づくり。

菊川さんの対話の相手は、行政や学校の人々だけではない。地域に根づく器楽指導者や楽器店の人々とも腹を割って話していった。初心者の多い子どもオーケストラでは、楽器を取り落とすこともあるだろう。ちょっとした故障ならその場で直せるくらいの練習環境が必要だ。だが弦楽器を修理できる人は校内はもちろん、相馬市にもそうはいないのだ。

楽器技術者の後藤賢二さんは、2012年3月に教育委員会に招かれ、初めて菊川さんに会った。「東京からなんだかすごい人が来た。これからどうなるんだろうと思いました」。後藤さんは市内の楽器店に勤める。小中高の音楽の部活動をずっと支えてきた縁の下の力持ちだ。 楽器一筋50年の後藤さんだが、40代の菊川さんと話すうちに心打ち解け、申し出た。「子どもオーケストラは私の人生の夢でした。ぜひとも協力させて下さい」。その言葉の通り、後藤さんは2年半経った今も練習に来る。菊川さんや指導陣とのランチミーティングに加わり、子どもたちにわいわい取り囲まれて修理している。エル・システマジャパンがネット上に公開した後藤さんの近影には130人を超える「いいね!」がついた。かつて後藤さんにお世話になった子どもたちが今は大人になって、日本各地からふるさとを見つめる。ネットを通じて寄付やコメントも集まった。後藤さんの相馬に尽くした半世紀には温かさがある。行政にも学校にも属さずに地域を支える人々との対話を、菊川さんはこれからもたいせつにしていく。

エル・システマとはなにか。創始者アブレウのことばを引いて、菊川さんは話した。「日本では、システム(組織)といえばかっちり定まったイメージでした。 エル・システマは『そこにあるけれど形になっていない』。地域のいろんな部分を吸収しながら、その場に合う最適なシステムを創る。それがエル・システマジャパンがやろうとしていることです」。

大きな楽器をにこやかに運ぶ後藤さん。大人がリラックスしていると、練習もきっと楽しいよね。© FESJ/2013/Mariko Tagashira

大きな楽器をにこやかに運ぶ後藤さん。大人がリラックスしていると、練習もきっと楽しいよね。© FESJ/2013/Mariko Tagashira

人々がおのずと、意味や価値を獲得する
環境の創造。

エル・システマジャパンのオーケストラ活動では、長いときは朝10時から夕方16時までをひとつのホールで過ごすことになる。ところが、子どもたちはどの時間帯でも落ち着いた印象だ。子どもたちは最初からこうだったわけではないのだそうだ。当初はホールを走り回っていた。それが、オーケストラは面白いと知り、この一年間で変わったのだという。

「相馬の子どもたちには本番が多い」という関係者や音楽家の声もたびたび聞いた。実際に2014年9月から11月までの秋シーズンは、東京、相馬、仙台で5回の本番を重ねている。エル・システマジャパンの外部評価調査を行ってきた青山学院大学の苅宿俊文教授は、演奏機会の多さを指摘する。「さまざまな観衆の前で演奏する機会の多さと、子どもたち自身の効力感には相関があります」。たとえば高齢者施設で演奏会をする場合、お年寄りに楽しんでもらう演奏の場に自分がいるということを、子どもたち自身で認識しあえる環境がたいせつだというわけだ。機会と環境のプラスの循環。この循環が相馬子どもオーケストラ&コーラスの活動の特長ではないだろうか。

相馬市では喫緊の課題として、被災した子どものメンタルケアが掲げられているという。そんななか、相馬子どもオーケストラでは、子どもたちのしなやかに育つ姿が見られた。いろんな人々と関わり、なかよくする。落ち着いて課題に取り組む。来訪者を歓迎し、未知の分野に挑戦する。それは大人の社会でも同じことだろう。エル・システマジャパンの3年半の活動が育んだ「生きる力」「豊かな土壌」が、子どもたちを通じて垣間見えた。

© FESJ/2014/Yutaka Kikugawa

© FESJ/2014/Yutaka Kikugawa

うなずき、寄り添い、ともにいるフェロー。
国際経験、芸術経験、社会経験をわかちあう。

渡辺更さん。 社会人フェロー。

福島県相馬市で指導ボランティアにあたる。東京では残業も休日出勤もある会社員だ。大学で語学を学び、シンガポールに一年、オーストラリア、カナダにも滞在し英語を学んだ国際派。高校、大学、社会人オーケストラではヴィオラを続けてきた。2014年2月からフェローとして活動に参加、月に二回東京から相馬を訪問し、子どもたちに寄り添っている。渡辺さんは、練習中はもちろん、休み時間にはいつも子どもたちのそばに佇む。学校であったこと、友達のこと、どの話にも耳を傾ける姿があった。室内ブランコに乗って遊ぶ子どもたちに、渡辺さんも笑顔を返す。練習中は、膝を曲げ、腰を落として子どもと同じ高さで目をあわせる。子どもの肩から腕を回し、子どもの手のひらに自分の手のひらを重ねて指の位置を探り当てる。渡辺さんは、ピアノを習った経験や、学生オケの学び合いの経験から、器楽指導とはこのように近い距離で触れながら言い含め、ひたすらに待つこと、ともにいることがたいせつだと、感覚的に掴んでいるようにみえる。

渡辺さんが活動に参加して8ヶ月が経った。楽器を始めたばかりの子どもにも力がついてきたと、渡辺さんは実感している。とくに初級者クラスから進級した子どもは、嬉しくて弾きたくてしかたがない様子だ。演奏技術ばかりでなく、意欲も育っている。

「ここでは年齢も進度もばらばらなんです。だからこそ子どもたちが教えあうシーンが見られます。菊川さんや、東京から来る私たちフェロー、アドバイザー、地域の方々、保護者の方々。まわりの大人たちみんなで子どもを見守るムードが、相馬にはありました」。

寄り添い、共感し、耳を傾ける。そんな人がそばにいてくれると、なんだかやる気がわいてくるんだ。

寄り添い、共感し、耳を傾ける。そんな人がそばにいてくれると、なんだかやる気がわいてくるんだ。

支援の考え方を持つ楽器指導者。
けっしておしつけない。人々の痛みを忘れない。

山本綾香さん。 初代フェロー。相馬に続く第二の拠点・ 岩手県大槌町で指導する。

2014年2月末、 青年海外協力隊の短期派遣でベネズエラに渡り、現地の子どもたちに弦楽器を教えていたとき、菊川さんからメールが届いた。「大槌に弦楽器指導講師として赴任しませんか」。帰国後は国際支援にあたるつもりだった山本さんの心は揺れた。翌3月、アドバイザーとして関わる予定だった指揮者が釜石の病院で急逝する。志半ばに倒れたリーダーの悲運にだれもが意気消沈するなか、それでもやりましょうという大槌町の声があった。だが、だれが? 東京から新幹線と釜石線で片道5時間。大槌へは移住することになる。大槌の人々の絆は濃く深く、被災の傷もまた深い。肝に銘じていないと、支援のはずが「ヨソ者のもたらす脅威」になってしまうだろう。楽器指導だけでなく、人々と対話し、共に暮らし、支援する側とされる側を着実につないでいく役回りだ。国内外で支援の考え方を深めてきた山本さんならきっとできる。菊川さんはそう伝えた。山本さんはついに赴任を決意し、7月、大槌町内の仮設住宅に移り住んだ。

9月からヴァイオリン指導にあたっている。当初はとにかく同じ志の仲間がほしかった。吉里吉里小学校と大槌町子どもセンターの二カ所を車で行き来し、十数台の楽器を運びこむのもひとり。外へ走り出す子どもと、我こそは弾きたい子どもが混在し、まるで練習にならない。どちらも認められたい、満たされたいという気持ちの現れだ、受け止めよう。そう感じた山本さんは、個人指導を盛り込み、合奏とソロを組み合わせた練習に変えた。ひとりずつコミュニケーションがとれるようになると子どもも落ち着き、練習が軌道に乗ってきた。 楽器を持っていられなかった6歳の女の子が、自分も弾けるようになったから聴いてほしいとやってくる。斜に構えていた小学2年生の男の子は、うまく弾けないパッセージに悔しさのあまり涙をこぼした。初めてのコンサートに向けて、子どもたちも山本さんも練習に熱が入る。

今、山本さんの心に浮かぶのはベネズエラのエル・システマで見た光景だ。森のようなオーケストラのなかに、今日来たばかりの五歳児がずっと佇んでいる。弦が錆びていても、音が間違っていても、子どもたちは楽器を奏でる喜びに溢れ、仲間と弓を動かすのが楽しくてたまらない。のびのびした学び合いの環境を創り出そうと、山本さんは大槌の人々と一緒に、ゼロから始めたところだ。

楽器を構えたら子どもたちが近づいてきた。和室という空間もなごやかでいいね。

楽器を構えたら子どもたちが近づいてきた。和室という空間もなごやかでいいね。

対話型リーダー。子ども、巨匠、プリンセス、学生、役人、社長。
誰とも等しくコミュニケ—ション。

菊川穣さん。 エル・システマジャパンの代表理事。ピアノ、陸上、バンド活動、サックス、学生指揮と、なんでもやってみた子ども時代。吹奏楽に夢中になったが、大学からは音楽とは離れた道を進んだ。ロンドン大学と大学院で教育を学び、帰国してシンクタンクに就職するも、想いは国際協力と世界の子どもたちに向けられていく。ユネスコで2年間、ユニセフで7年間、アフリカで働いた。2011年3月、日本ユニセフ協会から東日本大震災緊急支援本部チーフコーディネーターとして東北に入る。このときベルリン・フィル奏者と相馬の小学生のことばに動かされ、エル・システマジャパン設立を志すことになった。

「手応えは感じています。100人の子どもがそこにいて、ひとつの曲の形ができていく。敬老会などの地域社会の舞台は、音楽ホールの舞台以上に大事だと思っています」「ドゥダメルやストルツマン夫妻など、訪日する芸術家の来歴を、子どもたちはよくわかっていないと思います。でもわからせなくていい。子どもも地域社会も、気長に見ていくといいところが出てくる、それでいいんだと思います 」「オーケストラ活動は、福島県が50年手がけた器楽教育をベースにしています。一過性の支援ではいけない。地元のみなさんのペースで、地元の資源や伝統を活かして活動を続けていくことを考えています」。

菊川さんに話を聞くと、最後はいつも子どもたちのことばかりだ。子どもたちの取り組みを毎日のように喜び、ともに支えようと世界に訴える。設立以降そのエネルギーは絶えることがない。それでも菊川さんはこうも語るのだ。「まだまだです。まだまだ見えない」。菊川さんがそう口にするとき、形の見えないことへの不安はない。着地点を安易に定めずに、対話と調整を重ね続ける、支援の専門家としての粘り強さを感じる。

次回予告

ハル「本当に誰でも楽器弾けるようになるのかな。」

ピート「今日からチェロを弾くって子もいたね。」

黒猫「きっとへいきだよ。ゆっくりやろうよ。」

ハル「じゃあオーケストラに入る!」

B「楽器はなに?」

ハル「指揮者!」

全員(いるいる、こういうやつ……。)

学者「 ところで弦楽器について、ここでいちど確認しておきませんか。 弦楽器はこすって音を出す擦弦楽器です。本体は木製。にかわという接着剤で張り合わせています。4本の太さの違う金属製の弦を張ってペグという木ねじで留め、弓か指で音を出します。弓には馬のしっぽの毛が張ってありますが、弾いていくうちに切れ、いわば「薄毛」になっていくものです。時々技術者に替えてもらいましょう。」

***

次回は相馬子どもオーケストラの先生や子どもたちと一緒に、初めての弦楽器にチャレンジ!? ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。あなたならどれにしますか?

編集チーム BSYO ハルによるコラムはこちら。

BSYO / 黒猫 プロフィール:メーカー人事、ネットコンテンツ&コミュニティ開発を経てサイト企画制作へ。ライフワークはピアノ指導。)

http://dacapo.magazineworld.jp/music/156034/

インテリアへの想いを実現ギャラリーのように鮮烈に家族を包む理想の住まい

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ギャラリーのように鮮烈に
家族を包む理想の住まい

インテリアへの想いを実現

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2年弱かけてプランニング

のどかな都心の郊外。アイアンの門扉の向こうに建つその家は、一歩足を踏み入れると暖かで新鮮な空気に包まれる。玄関の大きなクリスマスツリー、薄いブルーの壁面に飾られた数々のフォトフレーム。アットホームなその雰囲気は、映画に登場する海外の富裕層の一軒家のよう。

「NYとフロリダに住んでいた子供の頃の経験が影響しているんです。NYでは1階がアートギャラリーになった3階建てのレンガのアパートに住んでいたのですが、その時の印象がとても強いですね」。

と言うのは自宅でベトナム・タイ料理教室を営む小原麻美さん。結婚後、家を建てるときには理想の家を目指し、とことんこだわり抜いた。

「ハウジング雑誌を見ていたので、こういう家にしたいというイメージはありました。いろいろ調べた結果、自由に設計させてくれてアイアンをきれいに使わせてくれる会社にお願いしました」

週1回のミーティングを2年弱も続けてプランニング。

「変更した設計図をもらって帰り、また1週間考えて、ということの繰り返しでしたね。でも、設計士さんとお酒を飲みながら話し合ったりして、とても楽しくさせてもらいました」

http://dacapo.magazineworld.jp/lifestyle/156181/

籾山由美の東京-島根 小さな暮らしお菓子でアクセサリー。 ゼリービーンズのブレスレット。

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カラフルな色と柄が魅力的。

まだまだ寒い日が続きます。炬燵でもできる手仕事が楽しみ。寒さを押して出かけた先でたまたま手仕事の材料を見つけました。輸入だけのお菓子を扱うお店で山盛りのゼリービーンズ。愛らしい形と色に惹き付けられ、これを使ってアクセサリーを作る事にしました。寒さを押してエイ! とばかりにいつもの手芸店に立ち寄って接続のためのパーツを探しました。

突然デザインを思いついてもいいように的確なアドバイスをしてくれるお店を普段から見つけておきましょう。強い見方です。パーツに関して詳しい方がいると迷いがありません。足りないパーツも思いついてもらえたりします。余分なパーツをたくさん購入しなくてすむようにもなります。パーツは1個が1円、5円、10円単位でスタートしますが購入単位が100個だったりします。使う数も算段して割高でも残らないように購入するのがコツです。新しいデザインが生まれるまで捨てられませんよ。

お店、webなら『貴和製作所』 が、お勧め。アクセサリー・パーツの専門店です。パーツを見つけられず困っている方に特に推薦します。同じサイズでも色、デザイン共に豊富に揃います。元々パーツそのものが小さいので1㎜違うと印象が大違い。悩みます。見てると全部欲しくなりますがあまり迷わないで決める事も大事です。予算オーバーは簡単ですよ。笑。

細かい作業にはペンチ類が欠かせません。使いやすい道具を見つけてくださいね。

細かい作業にはペンチ類が欠かせません。使いやすい道具を見つけてくださいね。

小さいパーツを失くさないように!

向かって左のラジオペンチは小さいパーツをつまみ上げたり曲げたりに使います。なくてはならない道具です。隣は先が円錐でこれが特徴の丸ペンチ。小さく円形に曲げても角ができません。仕上がりが奇麗になる道具です。上部分から、チェーンで長さの調節ができる取り外しに便利なアジャスター。作業中、リボンを留めたりなにかと便利な安全ピン、数字の9に似ている9ピンはビーンズのジョイントに使います。

下向かって左は、留め金のヒモ留めのエンドパーツ。これは先が歯形になっていてリボンやヒモを鰐のように噛んで留めます。隣もエンドパーツのカシメ。革ひもなどの端を留めます。webならエンドパーツと検索するとすぐに出てきます。英字のC形のCカン。接続に使います。パーツがとても小さいので中身が見える小さなジパー付きの袋やタッパーに入れておくと便利です。

ビーンズに9ピンを通すとき割れないようにそっと。きつく握るとビーンズが崩れます。

ビーンズに9ピンを通すとき割れないようにそっと。きつく握るとビーンズが崩れます。

慎重に。ジョイント作り

ゼリービーンズの色、柄、数を決めたらビーンズを繋ぐ9ピンを通します。ゆっくり、指に力を入れないようにしてください。ピンが曲がったり、ゼリービーンズの形が崩れます。両指ともに素材を支えるくらいの感じの力がいいですね。

長さを間違えるとせっかく通した9ピンが使えません。小さな円形を作る練習をしてください。思いのほか力にコツが要ります。

長さを間違えるとせっかく通した9ピンが使えません。小さな円形を作る練習をしてください。思いのほか力にコツが要ります。

ラジオペンチは試し切りを是非。

ラジオペンチの奥がカッターになっていますから必要のない部分をここで切り取ります。ラジオペンチは力を入れなくても金具が切れるのが命。あまり安いラジオペンチはお勧めできません。すぐに刃が駄目になり切れなくなってしまいます。

同じ品質のはずなのCカンもゼリービーンズも思いがけないところで形が崩れます。材料は完成よりも2割増の数は必要ですね。

同じ品質のはずなのCカンもゼリービーンズも思いがけないところで形が崩れます。材料は完成よりも2割増の数は必要ですね。

何度失敗してもへこたれず。

9ピンを切ったら丸ペンチに変えて先を丸く円形に曲げてジョイントを作ります。ここで何度かゼリービーンズを崩してしまいました。強く触らずに9ピンを支えながらしっかり円形のジョイントを完成させてください。

Cカンの切り口を左右に離します。間違っても切り口を広げないでくださいね。

Cカンの切り口を左右に離します。間違っても切り口を広げないでくださいね。

Cカン使って更なるジョイント。

ペンチで挟み直すと元の形に戻るようにCカンの切れ目を左右に離します。切り口を広げると元の形には戻りません。離したらゼリービーンズの9ピンで作ったジョイントに通します。今回はCカンはひとつだけにしていますがいくつでも繋いでください。Cカンの数でデザインがずいぶん変化します。面白いですよ。

9ピンを通したらCカンを丁寧にラジオペンチで鋏み、ぎゅっと押さえます。

9ピンを通したらCカンを丁寧にラジオペンチで鋏み、ぎゅっと押さえます。

Cカンの中で9ピンが動くかな?

Cカンに9ピンのジョイントを2個入れてCカンの開いた切り口をラジオペンチで挟んで平に戻します。しっかり挟んでください。9ピンのジョイントがしっかり入っている事も確認してくださいね。

ここでゼリービーンズにニスを塗ってコーティングします。手の熱や汗でゼリービーンズが溶けたり変形するのを防ぐためです。ちなみに私はニスを使うとかぶれる事があるので使っていません。かぶれやすい人は注意してください。コーティングをしていないので私は冷蔵庫のドア飾りとして楽しんでいます。

ニス 『アサヒペン』 

金具を変えてデザインを楽しんでください。小さければ小さいほど繊細になり素敵です。

金具を変えてデザインを楽しんでください。小さければ小さいほど繊細になり素敵です。

ブレスレット完成。リボンも使って。

リボンは先に紹介したヒモ留めを使って留めています。リングは手の甲がするりと入るサイズ。アジャスターを使って取り外し可能なブレスレットも素敵ですね。リボンがかわるだけでも雰囲気が変わり、楽しいですね。ゼリービーンズだけのロングのネックレスも魅力的です。ゼリービーンズでアクセサリーを作ってみてください。

http://dacapo.magazineworld.jp/lifestyle/156211/

癒しと高揚感 絶景を眼下に家族が集うエントランスラウンジのある家

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癒しと高揚感 絶景を眼下に家族が集うエントランスラウンジのある家

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2世帯で暮らす、愛着のある家

眼下に海を見下ろす、葉山の高台。そのロケーションを最大限に生かした家に、加藤潤子さんファミリーは実妹ファミリーと暮らす。

「海の近くに暮らしたいという母のために、36年くらい前に父が建てた家なんです。いちどは家を出て東京に住んでいたのですが、この家を売却するという話を聞いて大反対して。妹夫婦と2組で父から購入して、2世帯で住むことにしたんです」

海辺での暮らしを堪能したご両親は、今度は蓼科の山に惹かれ移住することに。そのためこの家を売却する必要があったのだが、幼少期を過ごした葉山の家を人手に渡すのは、潤子さん姉妹はどうしても嫌だったのだという。

「まわりの環境も含めて、子供の頃の思い出がいっぱいつまった家ですから。今、自分が親になって子供を育てるにあたっても、色々な点で安心感を感じることができますね」

小学3年生と3歳の男の子を持つ加藤さん夫妻、赤ちゃんが生まれたばかりの妹さん夫妻。そして時々帰ってくるご両親。大家族の温かな家が、海と山に囲まれた風光明媚な地に建つ。

http://dacapo.magazineworld.jp/lifestyle/156266/

『ジミーとジョルジュ』『毛皮のヴィーナス』M・アマルリック出演2作。

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複雑怪奇な人間の心理の奥深くに
分け入る人物像。

『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』、『毛皮のヴィーナス』と出演作が続けて公開中のマチュー・アマルリック。いずれの作品でも複雑怪奇な人間の心理の奥深くまで分け入る冒険的な人物を演じています。

『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』は、アルノー・デプレシャン監督の最新作。マチュー・アマルリックの鮮烈な登場を印象をづけたデプレシャン監督『そして僕は恋をする』(96)から実に20年、デプレシャン作品への出演は5作品目。ベニチオ・デル・トロ演じる心に傷を負ったネイティブ・アメリカン系帰還兵ジミーの精神を解き明かしていく民族学者にして医師であるジョルジュを演じています。

ジミーの話を細かく聞きながらメモをとり分析、その得体のしれない頭痛と連夜の悪夢の原因を解き明かしていくのですが、おぼつかない記憶を手繰り寄せながら訥々と語るジミーの悶々とした表情と対照的に飄々、軽妙なジョルジュがユニーク。

手の甲にお金を乗せ落とさないようにしながら紙の鍵盤でのピアノのお稽古をし、はたまたお湯を張ったウォッシュボウルに足を浸しながら執筆に勤しんだり。一風変わっているけど、実にチャーミングな人物像を披露しています。

アメリカ先住民の帰還兵ジミー(ベニチオ・デル・トロ)の治療をする精神分析医ジョルジュ・ドゥヴルーを演じる 『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』© 2013 Why Not Productions-France 2 Cinema-Orange Studio

アメリカ先住民の帰還兵ジミー(ベニチオ・デル・トロ)の治療をする精神分析医ジョルジュ・ドゥヴルーを演じる
『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』© 2013 Why Not Productions-France 2 Cinema-Orange Studio

アルノー・デプレシャン特集上映で
辿る輝跡。

『毛皮のヴィーナス』はマゾヒズムの語源ともなった作家ザッヘル=マゾッホの原作『毛皮を着たヴィーナス』からモチーフを得たデヴィッド・アイヴスの戯曲の映画化。『毛皮を着たヴィーナス』の演出を手がける舞台演出家 トマとそのオーディションに現れた女性 ワンダの会話劇です。『テス』(79)、『戦場のピアニスト』(02)のロマン・ポランスキー監督最新作で、その愛妻にしてミューズ エマニュエル・セニエを稀代の妖婦 ワンダ役に配しました。マチューはそのオーディション中に自らの精神の迷宮に入り込んでしまう舞台演出家トマを演じています。

マゾッホ原作の『毛皮を着たヴィーナス』の主人公ワンダ役のオーディション終了後のステージで物語は進行していきます。自称女優のヴァンダに押し切られ、トマは仕方なく追加オーディションをすることになるのですが、やってみるとこのワンダがはまり役。セリフは完璧。読み合わせにトマも付き合うのですが、ちょっとした合間に覗かせる役に対する理解も深い。なぜかトマ自身へも深い理解も示し、トマはその妖しい魅力に堕ちていきます。

読み合わせで、毛皮を来たヴィーナス=ワンダ に心酔していくクシェムスキー博士のセリフを読むトマ。クシェムスキー博士が毛皮にまつわる幼い頃の記憶を語るセリフを口にするうち、虚構と現実の境界があやふやになり、トマの舞台が現実の中に溶けていく……「毛皮」を手にした瞬間のトマの表情が見ものです。

『毛皮のヴィーナス』では、オーディションに来たワンダ(エマニエル・セニエ)に惹かれていく演出家トマ・ノヴァチェクに扮する。『毛皮のヴィーナス』© 2013 R.P. PRODUCTIONS – MONOLITH FILM 

『毛皮のヴィーナス』では、オーディションに来たワンダ(エマニエル・セニエ)に惹かれていく演出家トマ・ノヴァチェクに扮する。『毛皮のヴィーナス』© 2013 R.P. PRODUCTIONS – MONOLITH FILM 

これまでにデプレシャン作品では傷ついた魂を持った人物を多く演じてきたマチュー・アマルリック。22日(木)からは『アンスティチュ・フランセ』でアルノー・デプレシャン特集上映もあり、スクリーンでお目見えの機会も多くなっています。また『さすらいの女神たち』に続く自身の監督・主演作『La chambre bleue』(14)の公開も期待されます。フランス映画界きっての作り手の軌跡と現在をぜひこの機会に確認してみて。

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マチュー・アマルリック Mathieu Amalric 1965年 フランス ヌイイ=シュル=セーヌ生まれ。デプレシャン監督『そして僕は恋をする』(96)でセザール賞若手男優賞、『キングス&クイーン』(04)、『潜水服は蝶の夢を見る』(07)で同主演男優賞受賞。『007 慰めの報酬』では敵役(08)で広く知られるように。『Mange ta soupe』(97)で初の長編監督デビュー、監督・主演の『さすらいのディーバだち』(’10)はカンヌ国際映画祭監督賞、国際映画批評家連盟賞受賞。『毛皮のヴィーナス』© 2013 R.P PRODUCTIONS – MONOLITH FILM 

class="mt20">『ジミーとジョルジュ 心の欠片(かけら)を探して』
シアター・イメージフォーラム 他全国順次公開中

出演:ベニチオ・デル・トロ、マチュー・アマルリック、ジーナ・マッキー
監督・脚本:アルノー・デプレシャン
音楽:ハワード・ショア
共同脚本:ジュリー・ベール、ケント・ジョーンズ
撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
編集:ローランス・ブリオー
原題:JIMMY P. : PSYCHOTHERAPY OF A PLAINS INDIAN
2013年 / フランス / カラー / DCP / 117分
提供:コムストック・グループ
配給:コピアポア・フィルム
© 2013 Why Not Productions-France 2 Cinema-Orange Studio

『毛皮のヴィーナス』
Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ他全国公開中

出演:エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック
監督・脚本:ロマン・ポランスキー
2013年 / フランス、ポーランド / シネマスコープ / 5.1ch / 96分 / G /
原題:VENUS IN FUR
字幕翻訳:松浦美奈
提供:ショウゲート、ニューセレクト 配給:ショウゲート

© 2013 R.P. PRODUCTIONS – MONOLITH FILM 

http://dacapo.magazineworld.jp/cinema/156246/


土屋孝元のお洒落奇譚。冬は柚子、初夏は枇杷、秋は葡萄に柿、 絵に描く果物について。

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佐藤錦とアメリカンチェリー。さくらんぼと赤いフルーツ 水彩で赤いフルーツを描いたものです。© Takayoshi Tsuchiya

佐藤錦とアメリカンチェリー。さくらんぼと赤いフルーツ 水彩で赤いフルーツを描いたものです。© Takayoshi Tsuchiya

柚子は画題にも向いています。

冬は柚子、初夏は枇杷、夏はメロンに西瓜、秋は葡萄に柿、絵に描くものは沢山あります。

料理の香り付けやアクセントに冬至の日に柚子湯につかると無病息災になるとか、日本には、このような風俗習慣がいろいろと残り、また、地方によっても微妙に違います。

お正月の松飾りや鏡餅、ひな祭りや、端午の節句、今では子供の日ですね、の菖蒲湯、七夕、お盆、朝顔市、ほおづき市、数えればキリがないほどの行事や縁日、お祭りがあります。日本人が四季に敏感なのは、このためなのかなあと改めて思います。

柚子は画題にも向いていて絵に描いてもよし、暖かい柚子湯も冷たいジュースも美味しいものです。

***

先日、日本橋に出かけ、帰りに『千疋屋総本店』にて美味しい洋梨を食べました。たしか、ル・レクチェとか?フランス原産でラ•フランスより外観が美しく、熟成にはモーツァルトを聴かせているようです。栽培が難しい品種で 今では、フランス本国では栽培していないとか。日本の農家はこの例を見ても、すばらしい仕事をしています。

他にも千疋屋総本店で あまりにも有名な桐箱入りマスクメロン、一パック1万円のイチゴやみかん、柿、葡萄、あんぽ柿もありました、みな産地から選ばれ千疋屋総本店のバイヤーの厳しい眼にかない、綺麗で美しく、食べても美味しいものが揃っていました。何事にもこだわり、工夫して美味しく、美しい品種を改良し育てる、日本が世界に誇るものの一つだと思うのですが、いかがでしょう。

洋梨ル・レクチェとラ・フランス。ル・レクチェは熟成すると綺麗に黄色くなります。ラフランスとの違い。© Takayoshi Tsuchiya

洋梨ル・レクチェとラ・フランス。ル・レクチェは熟成すると綺麗に黄色くなります。ラフランスとの違い。© Takayoshi Tsuchiya

こんなに美しくて美味しいくだものがいっぱい!

個人的にもデコポンは好きで題材にも使います。柑橘類では温州みかん、伊予柑、金柑、夏蜜柑、文旦、他にも知らない柑橘類が沢山あるのでしょう。

イチゴなら最近流行りのサンベリーと言う大きなイチゴ、博多とよのか、栃乙女、アマオウ、女峰……これもまだまだあるようです。りんごなら、サンフジ、つがる、むつ、紅玉、今さらながら、こんなに美しくて美味しいくだものがある国に暮らしていることに感謝をしなければなりません。

これからも絵の題材にして描いていきたいものです。

絵にする時のコツ、どう描くとそれらしく見えるかですが、さくらんぼを水彩で描く場合は、艶のある立体感を出すこと。それには赤の色が濁らないようにすることとその赤の反対色を使うことでしょうか。

洋梨はフォルムです。このフォルムが描ければ完成します。

そしてデコポン。これも同じくフォルムが重要です、とくに盛り上がるヘタの部分が描ければ完成します。

デコポン。柑橘類でも好きな果物です。© Takayoshi Tsuchiya

デコポン。柑橘類でも好きな果物です。© Takayoshi Tsuchiya

http://dacapo.magazineworld.jp/culture/156337/

商店だった建物を大改装 倉庫を改装したロフトのような クールな空間にリノベーション

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商店だった建物を大改装 倉庫を改装したロフトのような クールな空間にリノベーション

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住みたい街として人気上昇中の武蔵小杉駅から歩いてすぐ。便利で暮らしやすい場所に建つ、築19年の元店舗物件。リノベーションを前提に住む家を探していたこともあって、すんなりとここを買うことを決められたのだそう。

「『無相創』の米原政一さんなら、この建物をきっとカッコよく改装してくれるはず、とピンと来たんです」

アンティークやオリジナルの家具を扱う米原さんのショップは、住宅のリノベーションも数多く手がけている。顧客として店に足繁く通ううちに、家を作るならぜひ米原さんにお願いしたいと心に決めていたのだそうだ。

「僕の好みや趣味も知ってらっしゃいましたので、打ち合わせもとてもスムーズに進みました」

http://dacapo.magazineworld.jp/lifestyle/156384/

深瀬鋭一郎のあーとdeロハススイス・アート紀行 たぶん世界最古のアート蒐集地のひとつ、バーゼル。

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バーゼルのアートめぐりの起点となるバーゼル中央駅(Basel SBB 1909年)

バーゼルのアートめぐりの起点となるバーゼル中央駅(Basel SBB 1909年)

スイス後編は、アートの都バーゼルの紹介です。

空路チューリヒから入って、バーゼルを目指し、時間の余裕があればジュネーブ経由で帰国する、あるいはその逆回りで周遊する想定で書いていますので、前編で簡単に解説したチューリヒ、ジュネーブと併せて読んでみてください。

バーゼルは、ライン川中流のドイツ、フランスとの国境にあるスイス第3の街(人口16万人)で、アートでは世界の中心のひとつです。ライン河口からバーゼルまでは川幅が200mあって大型船が航行できる最終地点だったことから、古来、物流・商業の要衝として栄えてきたためです。1471年に神聖ローマ皇帝皇帝フリードリヒ3世から商業祭(messe)を開催する勅許を得ており、現在でも『バーゼル・メッセ』を会場として、大規模な見本市が開催されています。

バーゼルへは、日本からの直行便はないので、直行便が飛んでいるチューリッヒ(Zurich)でスイス国鉄に乗り換える(所要1時間+乗換時間)か、ジュネーヴ
(Geneve)で国内便に乗り換える(所要3時間+乗換時間)ことになります。イタリアで隔年開催される『ベネチア・ビエンナーレ』や、ドイツで5年毎に開催される『ドクメンタ』、10年毎に開催される『ミュンスター彫刻フェスティバル』の開催年には、これらの大規模国際展とアート・バーゼルをハシゴするアート関係者やコレクターも少なくありません。専用のジェット機が手配されることも多く、筆者のところへもそのツアー案内が送られてきます。

では、バーゼルの交通の中枢であるスイス国鉄のバーゼル中央駅(SBB)前を起点として、施設めぐりをするイメージで説明しましょう。

マリオ・ボッタ建築の『国際決済銀行(BIS)別館』。元々はスイスユニオン銀行のビルだったとのこと。

バーゼルの市内交通はバーゼル市交通局(BVB:Basler Verkehrs-Betriebe)によって運営されているバス(トロリーバス含む)14路線とトラム(路面電車)13路線があり、一枚のパス「バーゼルカード」で乗り降りできるので、とても便利です。基本的には皆パスで乗り降りしているので、パスの提示も求められないことがほとんどです。

中央駅の駅前広場から、グリーンベルトがあるアェッシェングラーベン(Aeschengraben)を5分ほどライン河の方向(北側)に歩くと、旧市街の東にあ
るAeschenplatz広場に出ます。Aeschenplatz駅にはトラムが6系統(3、8、10、11、14、15番)、バスが3系統(41、70、80番)でも行けます。スイスの建築家マリオ・ボッタ(Mario Botta、1943-)設計になる『国際決済銀行別館』(Verwaltungsgebäude der BIZ、1995年)の円形の建物がそびえ立っており、広場の向かい側には、ジョナサン・ボロフスキー(Jonathan Borofsky、1942-)の代表作のひとつ、全高13.5m、重量8tの『ハンマーを打つ人』(Hammering Man、1989年)が置かれています。

ジョナサン・ボロフスキーの『ハンマーを打つ人」はマリオボッタ建築に向かって左側方向に道を渡り直進100m先にあります。

ジョナサン・ボロフスキーの『ハンマーを打つ人』はマリオボッタ建築に向かって左側方向に道を渡り直進100m先にあります。

舞台芸術の中心
『バーゼル市立劇場』

では、トラム6、10、16番のTheater駅下車で、『バーゼル市立劇場(Theater Basel)』へ行ってみましょう。

バーゼルにおける舞台芸術の中心で、秋から春にかけてのシーズン中は、オペラや演劇が次々と上演されています。 前庭には、スイス出身の美術家ジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely、1925〜1991)の手になる噴水『謝肉祭の噴水』(Fasnachts-Brunnen、1975-77)があります。この作品が特に有名なので、市立劇場というと、通常はこの作品しか紹介されない傾向がありますが、実は劇場周囲や屋上に多くのパブリック・アートが設置されています。

バーゼル市立劇場

『バーゼル市立劇場』前のジャン・ティンゲリー噴水。夏はなかなか良いです。

『バーゼル市立劇場』前のジャン・ティンゲリー噴水。夏はなかなか良いです。

中世から近現代までの西欧絵画のコレクションが充実
『バーゼル市立美術館』

続いて、Kunstmuseum駅(トラム2、15番)またはBankverein駅(トラム3、8、10、11、14番)下車で、『バーゼル市立美術館(Offentliche Kunstsammlung Basel、通称Basler Kunstmuseum)』に行くことができます。1671年に開設された世界最古の公共美術館の1つです。印刷業などで財を成したアマーバッハ家(Amerbach)のコレクションをバーゼル市が購入し公開したものを基としており、アマーバッハ家が支援していたハンス・ホルバイン(Hans Holbein der Jüngere、1497/8頃-1543)の代表作『死せるキリスト』、『画家の家族』をはじめ、中世から近現代までの西欧絵画のコレクションが充実しています。2016年に新館企画展示棟が竣工予定で工事中です。

夕暮れの『バーゼル市立美術館』外観。古風な石造りの建築が美しいです。

夕暮れの『バーゼル市立美術館』外観。古風な石造りの建築が美しいです。

『バーゼル市立美術館』の中庭。オーギュスト・ロダン『カレーの市民』などが設置されています。

『バーゼル市立美術館』の中庭。オーギュスト・ロダン『カレーの市民』などが設置されています。

『バーゼル市立美術館』はすぐそばにある『『バーゼル現代美術館』 (Museum fur Gegenwartskunst) 』とは姉妹関係にあり、入場券が共通で、『バーゼル市立美術館』が所蔵する同時代美術も『バーゼル現代美術館』に展示されています。『バーゼル現代美術館』は、1980年に開館した1960年代以降の美術を専門に展示する美術館としては世界で最も歴史のある美術館の1つです。2つの財団(Emanuel Hoffmann Foundation、Christoph Merian Foundation)とバーゼル=シュタット州により共同設立されており、『バーゼル市立美術館』が運営を受託しています。4月6日まで河原温『One Million』 Years – System und Symptom」展を開催中です。

バーゼル市立美術館&現代美術館

有名な『バイエラー・ギャラリー』は
『バイエラー財団美術館』に。

なお、『バーゼル市立美術館』から大聖堂に向かう通り(Rittergasse)より繁華街の方に降
りて行くと、以前は有名な『バイエラー・ギャラリー』があり、アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)作品などを扱っていたのですが、残念ながらオーナーの死去とともに閉廊されました。スイスの有力画商エルンスト・バイエラー(Ernst Beyeler、1921-2010)と妻のヒルディ・バイエラー(Hildy Beyeler、1922-2008)は、数十年間にわたり20世紀の芸術作品(主に絵画と彫刻)を収集し、子がいなかったことから、1982年にこれらのコレクションをバイエラー財団に委ねました。

バイエラー・コレクションの初公開は、スペインのマドリードの『ソフィア王妃芸術センター』で1989年に行われ、レンゾ・ピアノ(Renzo Piano、1937-)設計になる『バイエラー財団美術館』が1997年に開館しました。

印象派からアンディー・ウォーホールまで、著名な芸術家の名品が揃っています。中央駅からは、トラム2番(Badischer bf.行き)で終点バーディッシャー駅まで行き、そこからトラム6番(Riehen Grenze行き)に乗り換えて、Fondation Beyeler駅で下車、所要30分
程度です。絵画を中心に扱いながらも、自然光を積極的に取り込んでおり、廊下から美術館裏手に広がる広大な畑を眺めることができます。

『バイエラー財団美術館』

『バイエラー財団美術館』。右端が入口で左側奥は畑です。

『バイエラー財団美術館』。右端が入口で左側奥は畑です。

***

ドイツ国境近くにある『バイエラー財団美術館』からは、近くのドイツ領ヴァイル・アム・ライン(Weil am Rhein)にある『ヴィトラ・デザイン・ミュージアム』(Vitra Design Museum)へもハシゴすることが可能です。入国審査などは必要ありませんが、使用通貨がスイス・フランからユーロに変わるので注意が必要です。『バイエラー財団美術館のパンフレットにも『ヴィトラ・デザイン・ミュージアム』への行き方が書いてありますが、『バイエラー財団美術館』近くのバス停からバスに乗り10分程で『ヴィトラ・デザイン・ミュージアム』の最寄のバス停に着き、そこから歩いて10分程です。運営主体であるヴィトラ(Vitra)社は、椅子などで知られるドイツの家具メーカーなので、ガイド付き工場ツアーや安藤忠雄のセミナーハウスツアーも1時間毎(毎時定時)に用意されています。

『ヴィトラ・デザイン・ミュージアム』

『ティンゲリー美術館』(Museum Tinguely)は、マリオ・ボッタ(前出)により設計され1996年に開館した、ジャン・ティンゲリー(前出)の作品を展示した美術館です。廃材等を利用した機械仕掛けの彫刻で世界的に知られる美術家だけに、不思議な機械や作品で満ち溢れています。展示作品の多くは足元のボタンを踏むと動きます。ライン川沿いに建っているので、館内のプロムナードからはライン川を一望出来ます。ライン川を中央駅から反対側に渡った、メッセに行く途中の場所にあるので、メッセとその周辺のギャラリーを併せて周遊すると良いでしょ
う。

『ティンゲリー美術館』

『ティンゲリー美術館』の庭。ここにも噴水彫刻があります。

『ティンゲリー美術館』の庭。ここにも噴水彫刻があります。

『ティンゲリー美術館』の外観。

『ティンゲリー美術館』の外観。

バーゼル・フェアとして知られる
『バーゼル・メッセ』

『バーゼル・メッセ』(Messe Basel)へは、Messeplatz駅(トラム1、2、6、8、15番)下車で行くことができます。大規模な展示会に際しては中央駅から臨時便が運行されます。消費生活用品見本市(通称MUBA)、時計と宝石の見本市(通称Basel World<日本では何故かバーゼル・フェアと呼ばれています>)、『アート・バーゼル』(前編参照)などが重要な商談の機会となっています。なお東京ビッグサイトや幕張メッセと同じく、いつでも開場しているわけではなく、一般入場可能な展示会の開催時のみ入場可能です。

メッセ広場駅に行くと、周り中がメッセの建物で、その中にレールが走っているので方向感が判りにくいです。拡大地図必携です。

メッセ広場駅に行くと、周り中がメッセの建物で、その中にレールが走っているので方向感が判りにくいです。拡大地図必携です。

『バーゼル・メッセ』

メッセ広場では花屋だってギャラリーです。ブルーメンインセルの一階花屋コーナー。.

メッセ広場では花屋だってギャラリーです。ブルーメンインセルの一階花屋コーナー。.

ブルーメンインセルの2階ギャラリーコーナー。日本人作家のグループ展をやっていました。

ブルーメンインセルの2階ギャラリーコーナー。日本人作家のグループ展をやっていました。

なお、本コラムに掲載した情報は筆者が訪問した時点の情報ですので、トラムやバスの番号は現在と異なっている可能性もありますので、ご留意ください。バ-ゼルは世界の美術の中心地のひとつなので、他にもたくさんの施設がありますから、ぜひ開拓してみてくださいね。

http://dacapo.magazineworld.jp/gulliver/156343/

2/7Sat.丈青《I See You While Playing The Piano》リリース・コンサート丈青、J.A.M、沖仁による、一夜限りの夢の共演。

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一部ではアルバムを生演奏で再現。二部ではジャズとフラメンコ・ギターの共演を。

ピアニスト丈青は、日本のジャズシーンに欠かせない存在である「SOIL&”PIMP”SESSIONS」とそこから派生したピアノトリオ「J.A.M」のメンバーとして世界的な活動をしています。José James, 日野皓正、菊地成孔などのトップアーティストからもその実力を認められ、次代のジャズを担う最重要人物のひとりとして注目されています。

昨年、満を持して発表したのが、初のソロピアノ・アルバムとなる『I See You While Playing The Piano』。類い稀なるリズムとグルーヴ感覚に加え、内省的で静かな演奏、幼年期より培われた幅広い音楽的造詣をもとにした清新なソングライティングなど、丈青のピアニスト・作曲家としての新たな才能を照らしだし、高い評価を得ています。

2月7日に東京で開催される「丈青《I See You While Playing The Piano》リリース・コンサートwith J.A.M & 沖仁」は、第1部では丈青のアルバムからのレパートリーを中心としたソロピアノを。レコーディングで使用したコンサートグランドの名品「FAZIOLI F278」を会場に運び入れ、アルバムに収められた響きやその量感、余韻を再現。DSD 11.2MHz / 1bitマルチ・レコーディングという最先端の録音技術を駆使してレコーディング時の演奏を忠実に収めたアルバムの音を、生演奏によって五感で体験できる貴重な機会です。

第2部では、スペシャルゲストとして日本が世界に誇るフラメンコ・ギタリスト沖仁を迎え、丈青とのデュオや、丈青をリーダーとするSOIL&”PIMP”SESSIONSから派生したピアノトリオJ.A.Mとのセッションを展開。沖仁とは丈青、J.A.Mともに初共演となる今回は、それぞれの代表曲や往年の名曲などを中心に贅沢なラインナップで演奏の予定。ジャズとフラメンコ、それぞれのシーンを牽引する才能による夢の共演を、ぜひ体験してみてください。

左、丈青 右上、J.A.M 右下、沖仁

左、丈青 右上、J.A.M 右下、沖仁

【丈青《I See You While Playing The Piano》リリース・コンサート】
日時:2015年2月7日(土) 開場 17:15/開演 18:00
会場:スパイラルホール 東京都港区南青山5-6-23 (スパイラル3F)
前売 5,500円/当日 6,500円(共に税込・全席指定)
チケット:ローソンチケット【Lコード:76512】
公演に関するお問い合わせ:03-3498-1171(スパイラル)
丈青スペシャルサイト

『I See You While Playing The Piano』丈青
2014.10.8発売 2,870円(税別) レーベル:SPIRAL RECORDS

 

 

【Track list】 1. Friends are Comin’ *
2. One and Alone *
3. Crazy Race 9. Myself *
4. Blue in Green
5. My One and Only Love
6. We’ll Be Together Again
7. Body and Soul
8. Miles’ Mode
10. When I Was a Boy *
11. Akatonbo
12. I See You While Playing The Piano*
*丈青オリジナル楽曲

http://dacapo.magazineworld.jp/music/156374/

昭和の家屋をアレンジ創造性を発揮するクリエイターの拠点

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昭和の家屋をアレンジ創造性を発揮するクリエイターの拠点

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昭和の香り漂う家

以前は麻布に事務所を構えていた海山さんが、杉並の築50年程の物件に移り住んだのは2年半前。鉄筋コンクリートのモダンな建物から、元住居兼鉄工所だった木造物件へ。全く違った環境にシフトした。

「古い家がいいと思ったわけではないんです。自宅兼事務所として使える物件を探していて、友人からの紹介でここを見つけ、すぐ内見に来たら雰囲気に惹かれ、更にポテンシャルを感じたんです」

海山俊亮さんは家具や日用品など、生活まわりのもののデザインを手掛けるプロダクトデザイナー。

「麻布のときは自宅と仕事場を分けていましたが、生活にかかわるものを生み出す仕事なので、生活と仕事があまり離れていない方がよいと思うようになりました。この物件は自宅兼事務所として使用しても、階段のお陰でプライベートな空間と仕事の空間をうまく分けることができます」

http://dacapo.magazineworld.jp/lifestyle/156497/

松濤美術館にて開催 『ロベール・クートラス展 夜を包む色彩 カルト・グワッシュ・テラコッタ』

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© Robert Coutelas

© Robert Coutelas

2015年は画家 ロベール・クートラス(Robert Coutelas 1930-1985)の没後30周年。縦12cm×横6cmのボール紙に油絵具で人物、心象風景を17年間に渡って描き続けたカルト(carte)の制作で知られています。そのあまりに早すぎた死のあと、日本で個展の回を重ねるごとにファンを増やし、2010年にはカルト作品集『僕の夜 Mes Nuits』、2011年には遺作を管理する岸真理子・モリアさんが綴った『クートラスの思い出』(リトルモア刊)も刊行されました。

2013年にはフランス シャルトル市立美術館で大きな回顧展”Le monde de Robert Coutelas 1930 – 1985″が開かれました。カルトのほか、グワッシュ、テラコッタと多岐にわたる表現の全貌が明かされました。

2015年2月8日(日)から松濤美術館において開催の『没後30年 ロベール・クートラス展 夜を包む色彩 カルト・グワッシュ・テラコッタ』では、クートラス自身が死ぬまで手元に置いていたカルト作品を中心に、グワッシュ、テラコッタなど約150の作品が紹介されます。開催に合わせてグワッシュの作品集『僕のご先祖さま Mes Ancêtres』(エクリ刊)が刊行されます。

静かで悲しげ、どことなくユーモラス。その絵が伝える詩情は多くの人の心を捉えています。

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

Photo / Fumihito Katamura

『没後30年 ロベール・クートラス展 夜を包む色彩
カルト・グワッシュ・テラコッタ』

会場:松濤美術館(東京都渋谷区松濤2-14-14)
会期 前期:2015年2月8日(日)〜22日(日)
、後期: 2015年2月28日(土)〜3月15日(日)
休館: 2月9日(月)、12日(木)、16日(月)
3月2日(月)、9日(月)
時間:9:00〜〜17:00(入館は午後4時30分まで)
無料

記念対談
『クートラスを語る――描くこと、生きること』
堀江敏幸(作家) × 岸真理子(遺作管理人)

2015年2月8日(日)14:00〜、
参加費無料、予約不要


http://dacapo.magazineworld.jp/news/156500/

Fukuoka RePublik: Vol.4 3.5 Thu.- 3.15 Sun. dakota suite & quentin sirjacq 
Japan Tour 2015悲壮美のダコタ・スイート、光の表現者クエンティン・サージャック共演。

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聴く人を心象風景の旅に誘うクエンティン・サージャックが再び日本へ。

クエンティン・サージャックの演奏に触れたとき、“光”を感じるのは、僕だけではないだろう。さざめく水面にきらめく光、かすかな風にゆらめく蝋燭の光、澄みきった空気の彼方にまたたく夜空の星の光、そっとあたためてくれる熾火(おきび)の光と、さまざまな姿に変化しながら、僕たちの心の中に描き出されてゆく。光の風景に彩られながら情感豊かに展開されるストーリーとそこに潜む感情は、実はクエンティンのものではなく、聴いている私たち自身の心の奥深くに潜む記憶と感情が投影されたものであることに気づき、ハッと驚くと同時に、今まで感じたことのない既視感が訪れる。

僕たちをこんな素晴らしい心象風景の旅に連れて行ってくれたクエンティン・サージャックが、再び来日する。今回の来日ツアーは、良質な音楽を届けてくれるレーベル「SCHOLE(スコーレ)」からリリースされたダコタ・スイートとの共作アルバム『there is calm to be done』の発表を記念するもの。実は、クエンティンが日本で知られ、前回の来日が実現するようになったのは、彼が2010年のダコタ・スイート来日ツアーにサポートメンバーとして共演していたことがきっかけだった。このユニットでの演奏に生で接したことがない僕にとって、今回再びダコタ・スイートとの共演ツアーが実現すること、そして長年のファンだったダコタ・スイートを福岡に迎えることができるのは夢のようだ。

クリス・フーソン(左)とクエンティン・サージャック

クリス・フーソン(左)とクエンティン・サージャック

悲壮美を奏でるクリス・フーソンと、光りの表現者クエンティン・サージャックの美しい共演。

これまで15作を越えるアルバムを発表しているダコタ・スイートだが、その中でクリス・フーソンは、一貫して抑制の利いたスローテンポのリズムとミニマリスティックなアレンジを施したスタイルにより、現代生活の過酷さや日常で抱く悲しみを表現してきた。悲壮感の奥深くに潜む美しさは、一方で静かで穏やかな時間を僕たちに与えてくれる。それは、彼の妻 ジョアンナへの深い愛情をよりどころにしているからだろう。これまでの作品の中で思い浮かべる情景はモノクロームばかりだったのだが、今回の新作『there is calm to be done』では、安らぎに満ちた光を見ることができる。それは、“光の表現者”クエンティン・サージャックという素晴らしい共作者を得たことと無関係ではないだろう。クエンティンは、優しさと思いやりにあふれた親しみやすい人柄で、周囲をリラックスさせてくれる。前回の来日時、初演の福岡では、公演前に自分で見つけた美容室で髪を切り、ふらりと立ち寄った古着屋で買ったハリス・ツイードのジャケットをステージで着用し、髪型とジャケットのどちらも彼にとてもよく似合っていたことが、微笑ましいエピソードとして記憶に残っている。クエンティンは、これまでもダコタ・スイートの数作品に参加してきたのだが、新作ではプライベートでも親友であるふたりの親密感が増し、ダコタ・スイートが描く情景がこれまでにない新たなものになっていることは、クエンティンの人柄も深く影響しているように思える。

Dakota Suite with Quentin Sirjacqのライブ(2014) Photo by Stephan Kaffa

Dakota Suite with Quentin Sirjacqのライブ(2014) Photo by Stephan Kaffa

映画『Bright Days Ahead』上映&小柳帝さんによるトーク。

今回のツアーに先立ち、とても興味深いイベントが用意されている。クエンティン・サージャックが全篇音楽を担当した映画のサウンドトラック・アルバム『Bright Days Ahead』によって、多くの方が彼の音楽に深く魅了され国内で広く知られるようになったと思う。彼の音楽は、交互に訪れる心のざわつきと喜び、そして恋する大人の心の機微を繊細に表現している。そしてこの映画の主演をつとめるのは、フランソワ・トリュフォー監督の最晩年のパートナーとして知られるフランスの大女優ファニー・アルダン。実は、この映画『Bright Days Ahead』(原題: Les beaux jours / 邦題: 麗しき日々)は国内では、劇場未公開でDVDのみ発売されている。福岡で、この作品の初上映を行い、映画評論家/フランス語翻訳家の小柳帝氏をホストに迎え、クエンティン・サージャック本人によるトークショーを開催する。「映画と映画音楽の関係性」「映画音楽制作の舞台裏」「フランス映画と映画音楽の現在・過去・未来について」など、これまでにないトークショーは、僕たちの好奇心をかきたてるものになるだろう。そして、このイベントに続くツアーで、ダコタ・スイートの内面にある悲壮美とクエンティンがピアノで静かに描き出す光の美しさを多くの方に堪能していただくことを願っている。

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【dakota suite & quentin sirjacq
Japan Tour 2015】
3/5(木)『Film & Music Show“Bright Days Ahead” Talk with Quentin Sirjacq』
映画『Bright Days Ahead』国内初の上映会&トークショー
出演:クエンティン・サージャック ホスト:小柳帝 会場:福岡パッパライライ
3/6(金)福岡公演 inパッパライライ
19:00 開場 / 20:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/7(土)岡山公演 in 蔭凉寺
17:30 開場 / 18:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/8(日)大阪公演 in 島之内教会
18:00 開場 / 18:30 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/10(火)名古屋公演 in 5/R Hall & Gallery
19:00 開場 / 19:30 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/12(金)横浜公演 in 大倉山記念館
19:00 開場 / 19:30 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/14(土)東京公演 inサローネ・フォンタナ
16:00 開場 / 17:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/15(日)東京公演 with bar buenos aires in サラヴァ東京
18:00 開場 / 19:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
選曲 : 吉本宏、山本勇樹、河野洋志 予約: サラヴァ東京

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there is calm to be done
dakota suite & quentin sirjacq
2,200円(税別) レーベル:SCHOLE

【Track List】
01. this is my way of saying that I am sorry
02. flat seat
03. in the stillness of this night
04. committing to uncertainty
05. nu dat deze dag voorbij is
06. dronning maud land
07. ask the dusk
08. be my love
09. nothing is gone
10. the tears that bind us to this place
11. the world touches me too hard
12. there is calm to be done
13. I miss the dust
14. onzekerheid (bonus track)

http://dacapo.magazineworld.jp/music/156617/


世界を驚かせる音楽教室 エル・システマのキセキ- 5 - 仲間と育つ。オーケストラ教育の創る森の生態系。

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 © 2014 by Peter Brune

© 2014 by Peter Brune

世界を最も沸かせる指揮者グスターボ・ドゥダメルを生んだベネズエラ 驚異の音楽教育システム エル・システマ。『世界を驚かせる音楽教室 エル・システマのキセキ』連載では世界のエル・システマをご紹介しています。第5回では日本のエル・システマ、オーケストラの学び方について。

環境を創る教材『オーケストラ・スタディ』。

憧れの弦楽器をちょっと触らせてもらう。うっとりしたのも束の間、しばし硬直。ドってどれですか? こちとら経験ゼロだった。なぜエル・システマでは、経験を問わずすぐにオーケストラに迎えられるのだろうか。鍵は「環境」。仲間と本が教えてくれる。

日本国内で子どもたちにオーケストラ教育を展開するエル・システマジャパンの支援する相馬子どもオーケストラでは、2014年からユニークな導入教材を用いている。『オーケストラ・スタディ』。すっきりしたデザインの薄手の本だ。黒をベースに赤、青、緑、黄の4色刷。1ページには楽譜少々と図式がひとつだけ。文字はほとんどない。 ヴァイオリン用、ヴィオラ用、チェロ用、コントラバス用に、それぞれVolume1から4まである。オーケストラ教育の導入教材はめずらしいというがそれも当然、これまでオーケストラは熟練者向けの活動とされてきたからだ。楽器の導入教育はここ300年、個人指導と教則本が担ってきた。

オーケストラの練習では、指導者ははるか遠く指揮台にいる。初心者が困っていても、その場ですぐには教えてもらえない。だからこそ、隣にいる同じパートの友達やフェロー(指導補助者)、 地域の人、きょうだい、保護者など、まわりの仲間こそが頼みの綱だ。仲間のひとりがやってみせ、本を開き「ここだよ」と指さしてやればいい。口でうまく説明できない人も、文字をすぐ読めない人も、楽譜をまだ知らない人も、図式や番号ならば見てわかる。「これが共通語」と本にあれば、相馬の指導者からも東京の指導者からも、同じ用語で説明してもらえる。つまりこの教材では、まわりの仲間の言っていること、やっていることの「意味」がわかるようになるわけだ。指揮指導の浅岡洋平さんは目指す環境を「森」と呼び、多様な生物の共生するエコロジー(生態系)に喩える。相馬子どもオーケストラはいわば「オーケストラの森」か!『オーケストラ・スタディ』の新しさは、多様な人々が学び合える環境づくりを助けるところにある。

練習中はフェローも子どもも手元に「オーケストラ・スタディ」を用意。この指で弾こうと決めて、自分で指番号を書き込もう。

練習中はフェローも子どもも手元に「オーケストラ・スタディ」を用意。この指で弾こうと決めて、自分で指番号を書き込もう。

学び合いの環境づくりを助ける教材『 オーケストラ・スタディ』。Volume3ではハ長調スケール(音階)、3オクターブに挑戦だ!

学び合いの環境づくりを助ける教材『 オーケストラ・スタディ』。Volume3ではハ長調スケール(音階)、3オクターブに挑戦だ!

楽器をやるならまずは音階!
タブ譜で図解。情報をしぼりこんで倍速マスター。

「ド」の次は「ドレミファソラシド」を弾いてみたくなるのが人情というもの。高さの違う音を選んで背の順に並べたのが音階だ。簡単そうだが一筋縄じゃいかない。

『オーケストラ・スタディ』のもうひとつの特長は情報のデザインだ。世の中に音階はたくさんあるのだが、『オーケストラ・スタディ Volume3』で学ぶのはハ長調の音階だけ。ページを開くと、エレキギターのタブ譜のような図がまんなかにひとつ(画像資料・上) 。弦4本と指の位置を、シンプルな線と4つの色で示している。すっきりしてみえるのは「やること」をひとつにしぼっているからだ。1ステップは1ページでおしまい。1つの音階は12ステップに細かく分解してある。音階から、三度跳躍、分散和音にかたちを変えながらそれぞれ4ステップ、全部で12ステップというわけだ(画像資料・下)。指運びを変えずに音の数を増やしたり、音の数を変えずに指運びを変えたり、質と量を調整している。1ステップはおおむね4-8小節だが、ときには2小節までぐっと量を減らして、無理をさせない。

教材では、情報つまり演奏に必要な身体作業の量と質を設計し、弾く人の負担を減らしているのだ。それでも1冊をマスターした暁には3オクターブの音階が組み上がり、自分の楽器の持つ音域をひとりであらかた昇り降りできるようになる。初心者には、音階で遭難し挫折する人も多い。相馬子どもオーケストラの子どもたちはハ長調、ト長調の音階に3ヶ月かけた。だがニ長調と変ロ長調の音階は2週間でマスターしたという。情報を設計したうえでゆっくり取り組むと、次に習得する速度がぐんと上がるのは特徴的だ。

これは高音部記号で書かれたヴァイオリン用。このほかハ音記号で書かれたヴィオラ用、低音部記号で書かれたチェロ、コントラバス用がある。

これは高音部記号で書かれたヴァイオリン用。このほかハ音記号で書かれたヴィオラ用、低音部記号で書かれたチェロ、コントラバス用がある。

「ZigZag」とは造語で、3度進んで2度下がるワンツーパンチな三度跳躍練習のこと。ドミレファミソ…とあえてジグザグに進んで力をつける。

「ZigZag」とは造語で、3度進んで2度下がるワンツーパンチな三度跳躍練習のこと。ドミレファミソ…とあえてジグザグに進んで力をつける。

みんなと学び合ううちに、ひとりでも練習できるようになる。

みんなと学び合ううちに、ひとりでも練習できるようになる。

え、これがソルフェージュだったの? 専門的なコトも遊び心でぐっと集中。

え、これがソルフェージュだったの? 専門的なコトも遊び心でぐっと集中。

みんなで楽しくうまくなる!
ソルフェージュを織り込んだ基礎練習。

よし、音階が弾けた! だが楽譜はまだよくわからない。どうやらみんな、家や学校の部活動で「練習」をしているらしい。たいへんそうだな……。

相馬子どもオーケストラの練習は週1回、2時間から2時間半。基礎練習、 分奏、合奏が盛り込まれている。指揮指導の浅岡洋平さんは、基礎練習で「真似っこ」「当てっこ」を取り入れる。たとえば、だれかの自由に弾いたリズム「タッタカタ」「タンタンタン」をみんなで次々と真似する。「タ……」? リズムがまわってきたもののタイミングを逃し、停まってしまった人もいる。そんなときはみんなで大笑いして、これもリズムにして真似っこする。気づくといつのまにか50回繰り返しているのだった。一見遊びのように見えるが、リズム音型の練習だ。

「音読」では楽譜上の音の名前を次々と当てていく。音楽で使う音の名前は全部で7つだが、当初はラ、ミ、ドの3種類だけ。同じ速度で一斉に読み進める。全部読み上げると96音。アーケードゲーム「太鼓の達人」のようだが正誤チェックには時間を割かない。「ぜんぶできた人?」と呼びかけ、総評する。「ゆっくりしか読めなくても気にしなくていい。まずはひとつの音だけ得意になろう。」「線を指でなぞってね。その線に音符があったら必ず『ミ』って言おう。」「おうちで一日一回やってごらん」。
こうしたリズム音型の習得や楽譜の読み書きを、専門用語で「ソルフェージュ」と呼ぶ。浅岡さんは専門教育の手法を基礎練習にも楽しく取り入れて効果を上げ、毎日続けるよう促す。家や学校でも、自力で楽譜を読み解き、ひとりでも練習できる力をつけるためだ。

浅岡さんは練習中、すぐにはできない人の心配やいらだちを、いたわりやねぎらいのことばでていねいに取りのぞいていく。この時期の上達は練習量に比例するが、 ストレスが減り楽しさが増えれば、練習を長期間続けられるからだ。練習回数の少ない人も、進度がゆっくりの人も、期間を味方にすれば力がつく。浅岡さんの練習に参加し、チェロをともに弾きながら子どもたちを見守る隣町の横山さんはこう話す。「練習の時間が終わらないでほしい。いつまでもずっと練習を続けたくなるんです」。子どもたちは好きな曲を合奏する前は休憩時間も弾き続ける。楽譜を覗き込み指番号を書き入れる。楽しそうだが真剣だ。ここでは、練習はやらされるものではないのだった。

運指と階名を連動させたドリル。「もんだいしゅう」と呼ばれている。この音を弾くときどの指をつかっているかな? 学習では、体験を名付け、記憶だけにとどめずに紙の上に固定する作業はたいせつだ。楽譜にもどんどん指番号を書き込もう。

運指と階名を連動させたドリル。「もんだいしゅう」と呼ばれている。この音を弾くときどの指をつかっているかな? 学習では、体験を名付け、記憶だけにとどめずに紙の上に固定する作業はたいせつだ。楽譜にもどんどん指番号を書き込もう。

「指番号」と同じ音列に、こんどは「ドレミ」つまり階名を確認していく。さっきの音は、なんていう名前かな? ただし、もんだいしゅうには階名を書きこむけど、楽譜には階名は書かない。それが相馬子どもオーケストラのルールなんだって。

「指番号」と同じ音列に、こんどは「ドレミ」つまり階名を確認していく。さっきの音は、なんていう名前かな? ただし、もんだいしゅうには階名を書きこむけど、楽譜には階名は書かない。それが相馬子どもオーケストラのルールなんだって。

現場に適した教材を選ぶ。
指導者にも自由度の高いエル・システマの教育。

エル・システマでは各国共通の教材や教則本、認定指導者は持たない。「全ての子どもに一流の音楽を」という理念のもと、導入国が必要に応じ、地域の事情にあう教則本や指導者を選べばいい。

米国ロサンゼルスではベネズエラの指揮者グスターボ・ドゥダメル氏、スコットランドではベルリン・フィルのホルン奏者ファーガス・マクウィリアム氏、日本ではジュリアード音楽院出身のチェロ奏者浅岡洋平氏。異なるバックヤードの芸術家がそれぞれ指導にあたる。エル・システマ発祥の地ベネズエラでは日本で生まれたスズキメソードの教則本が用いられ、初期には日本人指導者が招かれた時期もあったという。

異なるバックヤードと共通の理念を持った世界の芸術家が、そのオーケストラに現在必要な指導法や教材を選んだり編み出したりし、自由度の高い教育を展開することができる。 指導者と教則本を特定しないことも、エル・システマの芸術教育と社会支援の特長のひとつになっている。

次回予告
ハル「よーし、音階が弾けたぞ。オレって天才かも。」

ピート「これからはどんな曲を弾くつもりだい?」

B「グリーグ、チャイコ、ドヴォルザーク。オーケストラの仲間と大作曲家の曲が弾けるなんてすてき!」

ハル「そりゃ決まってるよ。憧れのモ……モ……」

黒猫「モーツァルトか?」

ハル「百恵ちゃん。」

学者「 プレイバック! いずれにしても編曲が肝心ですね。ところで楽譜について、ここでいちど確認しておきませんか。伝統的な音楽教育では、楽器を始めた人は『音階』とともに『教則本』と『楽曲』に取り組みます。『教則本』とは技術習得を目的とし、指導者の思想を踏まえ、たくさんの短い練習曲を学びやすく並べてある本です。いっぽう『楽曲』は作曲家が自身の作品世界や依頼者の用途を実現するのを目的としています。再生装置のない時代、クラシック音楽ではこうした曲の数々は『楽譜』として紙に記録され、言語圏を超えて奏者や他国、後世の人々に伝えられてきました。」

***

次回は、音階を弾いたばかりの人も楽曲に取り組み、仲間と舞台に乗る、その秘密を楽譜から探ります。(BSYO / 黒猫 メーカー人事、ネットコンテンツ&コミュニティ開発を経てサイト企画制作へ。ライフワークはピアノ指導。 )

http://dacapo.magazineworld.jp/music/156438/

土屋孝元のお洒落奇譚。「最期の晩餐」はドーヴィルのスープ・ド・ポワソン? 

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「最期の晩餐」には……美味しいステーキ、でしょうか? © Takayoshi Tsuchiya

「最期の晩餐」には……美味しいステーキ、でしょうか? © Takayoshi Tsuchiya

悩ましい。究極の質問。

青山のとあるイタリアンレストランで、友人とフルコースをいただいていた時のこと。Tボーンステーキが素晴らしく美味。このように、仲間や家族、恋人と楽しく美味しい幸せな食事をした時に、ふと これが究極の食事だろうか? と考えるようになりました。

最期の晩餐&食事に何が食べたいか?……さて何だろうと思うのですが、季節を感じる魚や野菜が使われた高級な京風懐石でもなく、眼にも美味しさが伝わるフレンチでもイタリアンでもなく、血の滴るような美味しいステーキでもなく、焼き河豚に河豚刺し、唐揚げ、鍋に雑炊の河豚尽くしでもなく、大間でも南洋黒鮪の最高の鮪の握りでもなく、ごま油が香る 揚げたての熱々江戸前天ぷらでもなく、同じく江戸前の鰻屋の鰻でもなく、本当に何だろうか、と。30代や40代の若い頃には前述の料理があがった事でしょうが、いま、この年齢になって考えると、はたと迷うものです。

ロングアイランド郊外でバッファローウィング、脱皮したてのソフトシェルクラブの唐揚げ、か? © Takayoshi Tsuchiya

ロングアイランド郊外でバッファローウィング、脱皮したてのソフトシェルクラブの唐揚げ、か? © Takayoshi Tsuchiya

単品なら、晩秋のフランス ドーヴィルのスープ ド ポワソンを一口とか、ニューヨーク ロングアイランド郊外のダイナーのような店のスパイシーなバッファローウィング少々とか、脱皮したてのソフトシェルクラブの唐揚げのとか、パリの街角のカフェでブーランジェリーで焼き立てのバケットにハムとチーズを挟んだだけのジャンボンフロマージュサンドイッチとか、屋台の小ぶりなどんぶりの台南たーみー麺と白髪ネギたっぷり腸詰めとか……。こちらは台湾風の甘味噌があるとなお良いですね。それから、香ばしいピーナツとシャキシャキのもやしがたっぷりのバンコクの屋台のパッタイとか、ホンコンペニンシュラホテルのイングリッシュブレックファーストのクロテッドクリームとストロベリーやブルーベリージャムとスコーンとか、いろいろと頭に浮かぶのですが。

***

僕が思う究極は、竈で炊いた白いご飯に沼津か網代あたりの鯵の干物、天城のわさび漬け少々、梅干しに朝取れの生たまご、焼きのり、納豆があればありがたいです。ネギと豆腐の味噌汁、まるで伊豆の温泉旅館の朝食ですね。最期の食事には、食べ慣れたものを選ぶのでしょうか? ふだんの日常のご飯になりました、みなさまは、いかがでしょうね。

幸せな食事、幸せな時間とは、その時、その場で感じるのではなく、後で思い返してみて「ああ、あの時が幸せな時間と呼ぶのか。」と思うことですよ、と友人に言われたことを思い出します。

伊豆の温泉旅館の朝食が、僕の究極の選択でした。© Takayoshi Tsuchiya

伊豆の温泉旅館のような朝食が、僕の究極の選択でした。© Takayoshi Tsuchiya

http://dacapo.magazineworld.jp/gourmet/156606/

土間のある家手づくり家具のぬくもりとユニークな土間のある暮らし

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土間のある家手づくり家具のぬくもりとユニークな土間のある暮らし

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マンションから戸建に転じた気持ち

中央線の主要駅からモノレールが伸びた先にある、緑が多くのどかなエリア。大通りから少し入った閑静な場所に、家具職人の鈴木良彦さんと妻の章子さんが暮らす家はある。

「最初は戸建を買うつもりはあまりなくて、中古のマンションを買って好きなようにリノベーションしようと思っていました」と話す鈴木良彦さん。結婚して約2年、それまで住んでいた古いマンションからの引っ越しを考え、軽い気持ちで不動産屋に行ったそう。色々調べるうちに「マンションを買っても管理費などのコストがずっとかかる。それに土地を持っておけば、将来子どもが生まれたら財産として残せるかなあ」と戸建に気持ちがシフトしてきたそう。妻の章子さんは「そのとき見ていた物件の間取りに、あまりワクワクしなかったというのもあります」と話す。

色々回って土地を探した末、夫婦それぞれの通勤が可能で、落ち着いていながら新しさや今後の発展が感じられるこの地に家を建てることを決めたそうだ。「南側に影になるような建物がなくて、日当りが確保できるのも気に入ったポイントです」(良彦さん)。

http://dacapo.magazineworld.jp/lifestyle/156687/

from 山形 -13- 3.21sun. haruka nakamura PIANO ENSEMBLE山形公演 『音楽のある風景』とharuka nakamura「祈り」と「光」の音楽。

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Photo by Takashi Yatoo

Photo by Takashi Yatoo

パッケージから伝わる静かなる情熱

「黒」と言ってもそれは全くの「漆黒」ではない。温もりを感じさせる紙の質感と、仄かに灰色を帯びたその「黒」の中に、鮮やかな金色で、しかし慎み深い大きさの「音楽のある風景」の文字。開封すると、中には明るいベージュの台紙に刷りおろされた、谷藤貴志さんによる、深い陰影を湛えた海の写真が。そしてモノクロの闇の中に「光」を希求した写真を中心とした、分厚いリーフレットが封じ込められている。ファースト・アルバム『grace』、セカンド・アルバム『twilight』、そして故Nujabesとの音楽を結実させた3作目『MELODICA』、そして2014年に、sonoriumで公開録音された、haruka nakamuraの4作目となる本アルバムは、パッケージを手にした刹那から「光」と「祈り」の物語が始まる。音楽のみではなく、CDというパッケージ全体が作品として提示されているのだ。作り手の作品への静かなる熱意が伝わってくる。

Photo by Mika NAKASHO

 

「祈り」と「光」の音楽

『音楽のある風景』は、haruka nakamuraのピアノと、サックス/フルートの荒木真、サックスの内田輝、ヴァイオリンの根本理恵、打楽器の斉藤功の計5人の、ピアノ・アンサンブルによる作品。2010年のセカンド・アルバム『twilight』から継続するメンバーによるもので、そこに収録された4曲(夕べの祈り、harmonie du soir、dialogo、音楽のある風景)は、本作にも録音されている。Twilightとは、夕日が沈んだ後の一瞬の淡い光を意味するものであり、闇を目前とした一瞬の儚い輝きである。アルバム「twilight」は、その刹那の中に希望を託したこの上なく美しい作品だった。そして、その後積み重ねられ、熟成を育んできた彼らの共同作業は、その深度を確実増していた。インプロヴィゼーションを中心とした自由な交歓でありつつ、演奏者全員が同じ到達点に向けて収束していく。暗闇の中に始まり、敬虔にして無垢な肌触りの音楽は、光に到達し輝きを放つ。「祈り」を思わせるその作業によって、闇の中に「光」を見いだしているのだ。彼自身は無宗教と聞くが、教会に通うことが好きであったという。本作に貫かれている「祈り」には、そんな彼の宗教的といってもよい思念を感じる。同時に静謐で洗練を極めたチャンバー・ミュージックであり、またそこには懐かしい情景を想起させる旋律がある。

Photo by Takashi Yatoo

Photo by Takashi Yatoo

再び山形公演。そして映像とのコラボレーション

我々は2013年、「”Dialogo” haruka nakamura with imagem」 のタイトルで、彼のアンサンブルによる山形公演を開催し、地元在住の映像作家とのコラボレーションを試みた。haruka nakamuraの楽曲は、実に完成度の高い多くの動画がオフィシャルでネット上にアップされていて、8mmを中心として活動する東北芸術工科大学出身の二人(黄木優寿、黄木〈当時田中〉可也子)の映像との共演は、至極大胆な試みであったと思う。しかし彼等独自の感性に基づいた映像による、視覚的要素が加わることにより、haruka nakamuraの世界観をより感覚的に、山形での一期一会の機会として聴衆に提示し得た。

そして本年3月、再び彼ら二人の映像と、haruka nakamura PIANO ENSEMBLEとの共演が実現する。アルバム『音楽のある風景』をベースとした、アンサンブルのフルメンバーによる、東北では初の公演であり、山形公演だけの映像とのコラボレーションを、是非多くの方に体験して頂きたい。

haruka nakamura Photo by Takashi Yatoo

haruka nakamura Photo by Takashi Yatoo

【haruka nakamura PIANO ENSEMBLE TOUR 2015 -音楽のある風景-】
3月21日 山形・文翔館議場ホール
開場 16:30 / 開演 17:00
料金:前売り4,500円 / 当日券5,000円(全席自由)

5月6日(水・祝)兵庫・篠山 rizm
7月20日(月・祝)名古屋・5R/HALL
10月18日(日)湯布院・アルテジオ

音楽のある風景 haruka nakamura(ハルカ・ナカムラ)
2014 年12 月24 日発売 3,280円(税別) レーベル:KITCHEN. LABEL

【Track list】
<DISC 1>
1. 夕べの祈り
2. harmonie du soir
3. dialogo
4. nowhere
5. SIN
6. 四月の装丁 
<DISC 2>
1. 音楽のある風景
2. 光
3. 永遠
*ボーナストラック「CALL」のダウンロードクーポン

http://dacapo.magazineworld.jp/music/156703/

Book of the Year 2014 今年最高の本!

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今年も残すところあとわずか。雑誌『ダカーポ』の頃からの人気企画「今年最高の本!」を今年もお送りします。新聞・雑誌の書評担当者の投票で決める当企画、ベストセラーランキングとは一味違った「とっておきの一冊」があなたを待っています!

日本が抱える最大級の問題に、真正面から挑む!

A めっきり寒くなり、年の瀬も迫ってきました。今年もWEB版「今年最高の本!」をお送りしたいと思います。

B、C パチパチパチパチ!

B 今年でWEB版も4回目。どんな本が登場するのでしょう。新聞・雑誌で書評を担当されている方々に、13年12月から14年11月に刊行された本の中からそれぞれ5冊ずつ、好評価の本をアンケート形式で挙げていただきました。

A、B、C ご協力いただいた皆様、今年もありがとうございました!

C 今年のランキングは、ジャンルもテイストも異なる様々な本に票が割れたみたいですね。例年以上に熾烈なランキングになっているみたい。

A どの本も飛び抜けた票数を得たわけではなく、これから発表するランキングもわずかな差しかありませんでした。ジャンルという点で言うと、小説作品で票が割れている一方、昨年同様、いやそれ以上に、ノンフィクションの良書にも高い評価が集まっているみたいです。

C 登場するどの本にも、それぞれキラリと光る点があるということですね。紹介する方も力が入っちゃうね。

***

B それでは発表します。2014年「今年最高の本!」第1位は……『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」です!

A、C おめでとうございます!

B その名もズバリなノンフィクション作で、表紙も至ってシンプルですが、読書好きのネットレビュアーの間でも絶賛する声が多数上がっています。現代を生きる日本人が抱えているこの素朴な疑問に、真正面から立ち向かい、戦後日本の秘密を深く、丹念に明らかにしていきます。

A 本書の冒頭では「だれもがおかしいと思いながら、大きな流れをどうしても止められない。解決へ向かう道にどう踏み出していいかわからない。そんな状況がいまもつづいています。本書はそうしたさまざまな謎を解くカギを、敗戦直後までさかのぼる日本の戦後史のなかに求めようとする試みです」と書かれています。歴史を振り返り、現在の解決困難な大問題の道筋を探り当てようという試みですね。そして、基地問題と原発問題、一見まったく異なる問題の根幹には「日本国憲法」そして「日米安全保障条約」という共通のカギが隠されていることを明らかにしていきます。

C COURRieR Japonの井上威朗さんもイチオシの一冊です。〈タイトルは「なぜ国が敗訴する裁判は必ず最高裁でひっくり返るのか?」とも置き換えられます。裁判所が憲法にかかわる判断を放棄する「統治行為論」に典型的に表れる国家的な欺瞞。なぜ私たちは憲法を骨抜きにしてしまったのか、日本の戦後史を追うことで解明する過程で、ショッキングな事実が次々と明らかになります。ただ護憲を叫ぶのも対米従属を疑わないのも、同様に罪の深い思考停止であることを痛感。必読です〉とのことです。

A この本は「戦後再発見」双書」シリーズを立ち上げた矢部宏治さんという方が、地道な取材活動を重ねてまとめた一冊です。同シリーズの第一作目『戦後史の正体』(孫崎享著)はノンフィクションの名作として名高く、「今年最高の本!2012」でも第6位にランクインしました。いわば師弟にあたるという孫崎さんと矢部さんですが、2人によるトークショーも開かれているようです。

C 矢部さんの『日本はなぜ~』を読んでみると、基地周辺や沖縄の地図、複雑な概念をまとめた図表なども多用されており、作り込まれているなぁという印象を受けますね。「ノンフィクションはちょっと苦手かも……」という人にとっても、きっと読みやすいはず。私も含めて……(笑)。

B ともあれ基地問題、原発問題は、現実問題として日本人誰もが見過ごすことのできないはずの大問題です。ともすれば感情的な対立にもなりやすいテーマではありますが、本書から得られる知識は、歴史を踏まえた冷静な議論のベースになるのではないでしょうか。

A おりしも大事な国政選挙を控えた今の時期、これまでの日本、これからの日本を考える上で絶好の一冊が登場したと言えるでしょう。

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』/矢部宏治/集英社インターナショナル/1,296円

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』/矢部宏治/集英社インターナショナル/1,296円

class="mt30 mb0">発表!新聞・雑誌の書評担当者が選んだ2014年最高の本ランキング!

1位 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』/矢部宏治/集英社インターナショナル/1,296円 2位 『地方消滅』/増田寛也/中央公論新社/886円 2位 『八月の六日間』/北村薫/角川書店/1,620円 4位 『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』/上原善広/新潮社/2,181円 4位 『イノセント・デイズ』/早見和真/新潮社/1,944円 4位 『鳩の撃退法 上巻・下巻』/佐藤正午/小学館/1,998円 7位 『愛と暴力の戦後とその後』/赤坂真理/講談社/907円 7位 『井田真木子著作撰集』/井出真木子/里山社/3,240円 7位 『教誨師』/堀川惠子/講談社/1,836円 7位 『セラピスト』/最相葉月/新潮社/1,944円 11位 『怒り 上巻・下巻』/吉田修一/中央公論新社 /各1,296円 11位 『女の子よ銃を取れ』/雨宮まみ/平凡社/1,512円 11位 『境界の町で』/岡映里/リトル・モア/1,728円 11位 『シャバはつらいよ』/大野更紗/ポプラ社/1,404円

 

class="mt30">「地方」に存在する、課題と、素晴らしさと

B ではここからは、2位以降の作品を紹介していきましょう。ただ、1位から同率11位まで本当に票差は僅差で、どの本も今年を代表するにふさわしい本だと言えるでしょう。

A 本当にそうですね。まずは第2位ですが、同率で2作品が登場です。まずノンフィクションつながりで、『地方消滅』を紹介しましょう。著者は元岩手県知事の増田寛也さん。改革派知事として地方自治の最前線に立ってきた増田さんが語る「地方消滅」には、また特別な重みがあると言えるでしょう。

C ショッキングなタイトルですよね。日本経済新聞編集局文化部の郷原信之さんは「自分のふるさとはどうなるのか……と、ドキドキしながらページをめくった人も多いはず。分析手法や今後の対策については異論もあるだろうが、21世紀日本の最も大きな課題を明確に指摘した意義は大きい」と本書を評価しています。

B 私も、自分の故郷が帯に書かれている地図に載っていないか、思わず探しちゃった(汗)。読売新聞書評面「本よみうり堂」スタッフさんも、〈人口減少問題の危険性は以前から叫ばれていたが、本書によってようやく、自治体やマスコミの危機感に火がついたように思える。それは、実名を挙げ、「消滅可能性都市」(2040年までに、若年女性の数が5割以下に減ってしまう市区町村)のリストを表示したからだ。微温的対策に終始してきた問題を、改めて社会に突きつけた衝撃度において、元になった論文と合わせ、本書は今年の1冊にふさわしいのではないか〉と、問題の大きさを気づかせてくれた啓蒙書としての意義を語っています。

A 若年女性の数が、人口問題の大きなポイントなのですね。女性が住むのに魅力を感じるような街であることが、求められているのかもしれませんね。

C 素敵なデートスポットがあって、ブランドモールがいっぱいあって、美味しいスイーツがあって……。

B それだけじゃないでしょ、まったく。さて、もう一つの第2位を紹介しましょう。北村薫さんの小説『八月の六日間』。主人公はアラフォー女子の文芸誌副編集長。せわしない都会を離れ、山歩きへと旅立った主人公は、四季を感じさせる自然の雄大さ、美しさに触れ、心洗われます。まさに今話題の「山ガール」の冒険物語ですね。しかしそこから、物語は急転して……。

A 私自身、境遇がとっても近いからすごく共感できたわ。でも山は、高尾山(東京都内にある、観光客の多い山)ぐらいしか登ったことがないんだけれども(汗)。サンデー毎日の佐藤恵さんも〈アラフォー・独身・仕事アリ(けっこう責任もあって忙しい)女性の心理をリアルに描いている。悩んだり落ち込んだりうらんだりしながら、少しずつ素直になって回復していく過程が清々しく、ちょっと切なくて胸に迫る〉と、乙女心をくすぐられたようです。

C 週刊文春の八馬さんも〈「円紫さんと私」シリーズに始まり、『ひとがた流し』など多くの作品で凛とした女性を描いてきた著者の新たな傑作! 40歳を目前に仕事や人生にすり減る心を抱え、ひとり山に登る主人公。自然の中で自分と向き合う姿が清々しい。不器用でも頑固でも、今ある自分が愛おしいのだと、読者の背を押してくれる。今後も折にふれ読み返すであろう一冊〉と絶賛。ちょっと現実に疲れてしまった女性には、絶好の清涼剤となっているようです!

B 能天気なあなたとは違って、悩める女性は多いの!

A まあまあ(笑)。ともかく、山と自然の素晴らしさが心から味わえる一冊なのは間違いないわ。地方の素晴らしさって、きっとこういうところにもあるはずです。

『地方消滅』/増田寛也/中央公論新社/886円

『地方消滅』/増田寛也/中央公論新社/886円

『八月の六日間』/北村薫/角川書店/1,620円』

『八月の六日間』/北村薫/角川書店/1,620円』

読者を引きずり込む、珠玉の作品

B 続いては第4位の発表ですね。4位には同率で3作品が並びました。まずは1冊目、『石の虚塔』。皆さんは2000年ごろに世間を騒がせた「ゴッドハンド騒動」を覚えているでしょうか。

A 確か旧石器時代の遺跡や遺物がたくさん見つかったけど、それが実はある一人の考古学研究家によるねつ造だったと発覚した事件ね。教科書の表記も二転三転するなどして、大きな社会問題にもなりました。

B そうです、あれからもう15年近くがたちましたが、この事件を綿密に追いかけたのが本書です。月刊WiLL編集部の川島さんは〈石器・考古学という一見地味なテーマにも関わらず、抜群におもしろく、ぐいぐいと読み進んだ。考古学会がまたエグい、いろんな意味で。「考古学」と聞けば思わずロマンを感じるが、ロマンだけじゃ駄目なんだなぁとわかる。歴史を扱う人間への「歴史の皮肉」もあり〉と唸っています。

C 週刊文春の東郷さんも〈岩宿遺跡を発見した相澤忠洋。相澤を支え、旧石器時代の研究に取り組んだ芹沢長介。そして、旧石器捏造事件を起こした”ゴッドハンド”こと藤村新一。考古学会のドロドロとした人間関係を掘り起こしていく。松本清張の小説のような読後感を覚えるドキュメント。藤村新一へのインタビューも読み応えあり〉とのこと。まさに事実は小説よりも奇なりですね。

A 藤村さんご本人が出ているのが驚きですね。もうそれだけ時間がたったということでもあるのでしょうか。本編も会話が非常に多く、臨場感たっぷり。あの事件は何だったのかを、スリルを味わいながら振り返ることができます。

B 続いて第4位2冊目は、『イノセント・デイズ』。こちらは衝撃度満点のミステリー作品です。

C 「整形シンデレラ」とも呼ばれる、確定女性死刑囚。3人を殺した罪に問われていますが、その真相は何だったのか。序盤のストーリーから頭に入る先入観が、後半にはドンとひっくり返される。まさにミステリーの醍醐味ですね。

A サンデー毎日の佐藤さんによると、〈主人公について語られれば語られるほど、その人物が見えなくなってくる。他者の視線や思いによってとらえられる「私」とは誰なのか。「私」を主張することにどんな意味があるのか。今の情報化社会につきつけた課題は鋭くて深〉とのこと。うーん、意味深で面白そうですね。

B 著者の早見さんは『ひゃくはち』など、枠にとらわれずいろんなジャンルの小説に挑戦されています。今後も要注目ですね。第4位の3作品目は、『鳩の撃退法(上巻・下巻)』。ある家族の失踪をきっかけに、謎が謎を呼ぶ展開がどんどん進行していくミステリー。こちらはコミカルなやりとりも多く、純粋にエンターテインメントとしても楽しめる一作となっています。

C 婦人公論の角谷涼子さんも、興奮を抑えきれない様子です! 〈この作家の新刊を、本当に待ちわびていました。そして、1ページ目から期待を裏切らず軽やかに凌駕していく書きぶりに、胸が高まりすぎて平静に読めないほど。リーダブルなエンターテインメントでありながら、『小説の読み書き』(岩波新書)の著者ならではの技巧が凝らされてもいるので、読者は〈熟練の床屋の鋏捌きに身を任せるように〉安心して身を委ねて小説を楽しめるはず。映像化してももちろんおもしろいストーリーと魅力的な人物描写ですが、佐藤正午のこの文章は、小説でしか味わえません。まだ読んでいない人がうらやましい、YKS(読んで・後悔・させません)!〉

B 読売新聞書評面「本よみうり堂」スタッフさんも〈『5』(角川文庫)と同じく小説家の津田を主人公とした大長編は、「小説を書く」ということをテーマに据えたメタフィクションだ。たくらみに満ちた構成と、練り上げられた文章による抜群の読みやすさを併せ持った著者の最高傑作。脱力系のユーモアも含め、小説を読む楽しさを何度でも味わえる〉と高く評価。著者の佐藤正午さんの文章は、多くの人を惹きつけてやまないパワーがあるようです。

A 日本の小説界には今も、読者を引きずり込むような筆力の高い作家がたくさんいらっしゃいます。いろんな作家の作品を、「あれも、これも」と読んでみるのは究極の贅沢なのかもしれませんね。

『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』/上原善広/新潮社/2,181円

『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』/上原善広/新潮社/2,181円

『イノセント・デイズ』/早見和真/新潮社/1,944円

『イノセント・デイズ』/早見和真/新潮社/1,944円

『鳩の撃退法 上巻』/佐藤正午/小学館/1,998円

『鳩の撃退法 上巻・下巻』/佐藤正午/小学館/1,998円

『鳩の撃退法 下巻』/佐藤正午/小学館/1,998円

『鳩の撃退法 上巻・下巻』/佐藤正午/小学館/1,998円

 

人の「こころ」に触れ、癒す仕事。その実態とは?

B ではどんどん行ってみましょう。第7位には豪華に4作品がランクイン。まずご紹介するのが『「愛と暴力の戦後とその後」』。

A 著者の赤坂真理さんと言えば、何といっても「今年最高の本!2012」で第1位に輝いた『東京プリズン』ですね。戦争そして天皇制を少女の成長物語の中で描いたのが『東京プリズン』でしたが、本書は新書版の「日本論」です。

C 月刊宝島の高岡洋詞さんは〈『東京プリズン』のエッセイ版。「当たり前」を疑い、日常的な身体感覚から発して戦後史を丹念にたどり直し現在と結びつける筆致は小説家ならでは。鋭い洞察がいっぱいで、夢中で読みました〉と舌を巻いています。

B 婦人公論の角谷さんは〈いまを生きる私たちのメンタリティを理解するには、「敗戦」まで立ち返らなければならない。歴史や社会学の論理で語られてもぬぐいきれなかった違和感や「わからなさ」の正体に、赤坂さんは真っ正直に挑んでいる。「わからなさ」へのアプローチは、学者ではなく作家である赤坂真理ならでは。読者はその思考を追うことで、今まで持っていた「日本の戦後」のイメージが違うものに見えてくる〉と述べています。戦後日本という巨大なテーマに、学問の理屈ではなく、一人の生身の人間として向き合っているところが共感を集めているようですね。

A 続いて第7位2作品目は、「井田真木子著作撰集」。井田真木子さんはノンフィクション作家で、『プロレス少女伝説』で大宅壮一ノンフィクション賞、『小蓮の恋人』で講談社ノンフィクション賞を受賞されましたが、2001年に44歳の若さで亡くなられました。

B 朝日新聞読書面の鈴木京一さんによると、〈関川夏央の井田論も読ませる。版元は、井田の著作に影響を受けた女性が興した一人出版社〉とのこと。井田さんにゆかりのある人が、特別の想いを込めて発刊した一冊だと言えます。

C 生前の井田さんは女性プロレスラーの方と親交が厚く、本書では神取忍さんへのインタビューも収録されています。まさに伝説のレスラーならぬ、伝説のノンフィクション作家ですね。

B 第7位3作品目は堀川惠子さんの『教誨師』。教誨師とは、刑務所などの収容施設で収容者に道徳や倫理、あるいは宗教的な講話を行う人たちのことです。

A 本作で描かれているのは、少年時代に広島で被爆し、戦後教誨師となった渡邉普相さんという実在の人の物語です。受刑囚、中でも死刑囚への語りかけの中から見えてくる、生と死の問題。死刑制度にも一石を投じる内容となっています。

C 死刑囚本人ではなく、教誨師さんの視点から見た死刑を描いているのが画期的との意見が多いようです。また、堀川惠子さんは過去に『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』という作品で講談社ノンフィクション賞を受賞しており、違った角度から改めて死刑というテーマに迫っています。

B 教誨師に続いてはセラピストです。第7位最後の作品は、最相葉月さんの『セラピスト』。こちらも、心の治療にあたるセラピストの現実に迫ったノンフィクション作品です。

A セラピストの仕事には厳しい守秘義務があるため、外の世界からその実態をうかがい知ることは極めて困難です。ある時、カウンセリングに対する不審を抱いた最相さんは、5年もかけて謎に包まれたセラピストの仕事に迫り、その実態を詳らかにしています。

C 読売新聞書評面「本よみうり堂」スタッフさんは〈「カウンセリングとは何か」を5年間にわたり取材したノンフィクション。複雑な現代社会において、誰もが知る「心のケア」。しかし、その核心となるとふわふわ、ともすればうさんくさいもののように感じられもする。心理療法家の河合隼雄、精神科医の中井久夫らセラピストと患者のやりとりは、言葉に言い表せない心の世界を描き出してスリリング。病歴を明かし、自らをも取材対象とする作家の覚悟に圧倒される〉と、内容のリアルさを評価しています。

B 確かに、誰もが心の病を抱えてしまいかねない現代社会。しかしその回復は容易ではないようです。心理療法は、精神医学は、本当に有効なのか。興味を惹かれるテーマですね。

C ああ、「恋の病」を患う私を、誰かカウンセリングしてくれないかしら~。

A 私は、Cちゃんは至って健康だと思うわ(苦笑)。しかし、人の「こころ」に触れる職業を取り上げた作品が2つ並んだことは、現代という時代を象徴しているかのようでとても印象的ですね。

『愛と暴力の戦後とその後』/赤坂真理/講談社/907円

『愛と暴力の戦後とその後』/赤坂真理/講談社/907円

『井田真木子著作撰集』/井出真木子/里山社/3,240円

『井田真木子著作撰集』/井出真木子/里山社/3,240円

『教誨師』/堀川惠子/講談社/1,836円

『教誨師』/堀川惠子/講談社/1,836円

『セラピスト』/最相葉月/新潮社/1,944円

『セラピスト』/最相葉月/新潮社/1,944円

 

「こじらせ女子」の処方箋に、男子もホロリ

B 第7位が4作品続きましたので、次は第11位です。なんとここでも、4作品がランクインしました。

A 順にご紹介していきましょう。まず1作品目は、吉田修一さんの『怒り』。殺人現場に残された「怒」の血文字。そこから始まる、犯人追跡劇。ラストの1ページまで、ページをめくる手が止まりません。

C 日経WOMANの行武知子さんは〈ここに挙げておいて言うのもなんですが、「どうなんでしょう???」と思わせるところが面白かったという一冊。「怒り」の本質は何だったのか?というモヤモヤが残るあまり、周りの人にも読ませてしまう行動に出てしまいました。「怒り」を巡って複数の人間関係が登場し、「怒り」に対して様々な行動をとる。そのアプローチはさすがですが〉とのこと。うーん、思わせぶりなところが逆に怪しくて面白そうです。

B 映画化された『悪人』や『さよなら渓谷』でも知られる吉田さん。その手腕をとくと味わいましょう!続いてのご紹介は、『女の子よ銃を取れ』!

A まあ、『セーラー服と機関銃』を彷彿とさせるタイトルね!

C Aさん、ちょっと古いかも(笑)。この本のテーマはズバリ「おんなごころ」!「こじらせ女子」という言葉を世に広めた雨宮まみさんの作品よ。

B 綾瀬はるかさんのドラマ出演で、ブレイク必至の「こじらせ女子」。でもその定義って、実はすっごく難しい。他人の視線と自意識の間で、絶えず揺れ動く世の「こじらせ女子」の心を優しく包んでくれるのが、この一作です。

C COURRiER Japonの井上さんは〈「こじらせ女子」とは、社会から期待される性役割を楽しめず、欲望と自意識のはざまに悩む女子たち。多くの物語では決して主役になれない彼女たちに武器を授ける、リアリスティックな処方箋。こじらせ男子=喪男の豆腐メンタルにも突き刺さります〉だって(笑)。悩める男子にも、効果てきめんのようだね。

B 月刊宝島の高岡さんも〈基本的に好きな著者なのですが、女性にとって永遠のテーマである容姿の問題に果敢にアタックし、自らの苦い経験を告白しながら自分を愛する(むしろ「許す」?)方法を模索し伝えていく誠実さ、「同志」への優しさに、男ですが感動しました〉と語っています。

A 案外癒されているのは、男子の方なのかもしれないわね(笑)。11位3作品目の紹介は岡映里さんの『境界の町で』です。境界とは何か……東京電力福島第一原子力発電所周辺で行われている検問所のことを指しています。「3・11」からの3年間、週刊誌記者だった岡さんが取材を重ね続け、福島に通いつめ、そうしてできあがった、原発被災地のリアルを描いた作品です。

B 産経新聞の書評担当さんは〈筆者が直接見たこと、聞いたことしか書かれていない。取材対象にとことん深く関わっていく一人称のノンフィクションは、自らを傷つけ、時には相手も傷つけながら、誰かと一緒に「生きていく」ことの切なさと温かさを描き出す。衝撃的デビュー作〉と高く評価しています。直接見て、直接書く。ノンフィクションの王道を踏まえつつ、かつ、常に視線は一人称。だからこそ、多くの人の心を打つのではないでしょうか。

A 今なお続く被災の現実を、まさに「ありのまま」に描いている一作ですね。ネット上では被災地の人からも、「まさに実情はその通り」だという声が多数挙がっているようです。

C 第11位最後の作品は私から紹介するね。大野更紗さんの『シャバはつらいよ』。何を隠そう大野さん、「困ってるひと」で「今年最高の本!2011」第1位に輝いた作家さんです。

B 過去の第1位受賞者2人目のランクインね。自己免疫疾患系の難病を抱えた大野さんの闘病生活を描く、「困ってるひと」の続編にあたる作品です。

C ダ・ヴィンチ編集長の関口靖彦さんは〈今回は退院後の「シャバ」で難病を抱えつつ暮らすことの困難さが描かれる。苦しい状況にあってもユーモアを失わず、なんとか生きていこうというエネルギーは前作以上。さらに、苦しむマイノリティが少しでも生きやすくなるよう社会に対して呼びかける意思が前面に出てきた〉と語っています。

A 月刊ソトコトの小西威史さんも〈前作『困ってるひと』から3年、病院を出て「シャバ」で生きていく日々。今回もエンタメ感たっぷり、日本の「福祉」の現状を教えてくれる〉と、苦しい中にもユーモアを忘れない大野さんの前向きさを支持しています。

C どんな苦しい状況下にあっても明るさを忘れちゃいけない。大野さんの本を読むたびにそのことを強く感じるね。

B 同時に「福祉国家」と言われている日本でも、マイノリティを受け入れる受け皿はまだ不十分であることを如実に浮き彫りにしているわ。他人の問題ではなく自分にも関係した問題、関係するかもしれない問題だと捉えて、一緒に考えていく姿勢が大切だと思う。

『怒り 上巻』/吉田修一/中央公論新社 /1,296円

『怒り 上巻』/吉田修一/中央公論新社 /1,296円

『怒り 下巻』/吉田修一/中央公論新社 /1,296円

『怒り 下巻』/吉田修一/中央公論新社 /1,296円

『女の子よ銃を取れ』/雨宮まみ/平凡社/1,512円

『女の子よ銃を取れ』/雨宮まみ/平凡社/1,512円

『境界の町で』/岡映里/リトル・モア/1,728円

『境界の町で』/岡映里/リトル・モア/1,728円

『シャバはつらいよ』/大野更紗/ポプラ社/1,404円

『シャバはつらいよ』/大野更紗/ポプラ社/1,404円

 

本の主役も、本の読者も、女性中心の時代!?

 さて、ここまでお送りしてきました「今年最高の本!2014」、いかがだったでしょうか。今年は例年以上に、ノンフィクションの力作が多くの支持を集めていたように感じます。

B 本当に今年は、読み応えがあるノンフィクションが多かったわ。一方でフィクションであっても、どこか現実の問題を思い起こさせる作品も多かったようね。

C ランキングでは紹介できなかったけど、「もう一作選ぶとしたらコレ」という声もあった一冊を最後に紹介するね。篠田節子さんの「『長女たち』」。テーマは「介護される母、介護する娘」。日本経済新聞編集局文化部の郷原さんは〈篠田節子さんの新たな代表作の誕生。肉親、とくに母親と娘の確執は、現代日本の家族が抱える新たなアポリアだ。それにしても、日々の暮らしに男の存在がなんと薄いことか。最近のイキのいい小説からも、魅力的な男はどんどん姿を消している〉と。これも、現代日本の問題、それも女性にとって切実な問題をモチーフにした作品だね。

B 確かに小説の中に、魅力的な男性キャラクターはあまり見かけないかも……。今は女性の時代、って言ったら聞こえはいいけど、魅力的な男が減ってしまうことは女性にとっても寂しいことだわ。

A 「女性」をテーマにした作品が多数あったのも、今年の特徴でしたね。それだけ女性の生が注目されているのは確かだし、女性こそが本の読者の中心層になっていることの表れなのかもしれません。

C うんうん。でも男性にも、もっと頑張ってほしいな!

 そうですね。既成の価値観が崩れ、先の見えない今の時代。男性たちが苦境の中で何を学び、どういう力を発揮できるのかが、今一度問われているのかもしれません。

さあ来年は、どんな本が登場してくれるのでしょうか。1年後の年末、またお会いしましょう!

A、B、C 来年もよいお年を!

* * *

新聞の書評担当者が選ぶ、最高の本ランキング

朝日新聞※順不同

『AKB48とブラック企業』/板倉章平/イースト・プレス/929円 『謝るなら、いつでもおいで』/川名壮志/集英社/1,620円 『井田真木子著作撰集』/井出真木子/里山社/3,240円 『あしたから出版社』/島田潤一郎/晶文社/1,620円 『国家緊急権』/橋爪大三郎/NHK出版/1,296円

神戸新聞※順不同

『天の梯』/高田郁/角川春樹事務所/670円 『神秘』/白石一文/毎日新聞社/2,052円 『雷の子』/島京子/編集工房ノア/2,376円 『憲法の空語を充たすために』/内田樹/かもがわ出版/972円 『千鶴さんの脚』/高階 杞一著・四元 康祐 写真/澪標/1,620円

産経新聞※順不同

『境界の町で』/岡映里/リトル・モア/1,728円 『津波、写真、それから——LOST&FOUND PROJECT』/高橋宗正/赤々舎/2,808円 『スクリプターはストリッパーではありません』/白鳥あかね/国書刊行会/3,024円 『ミッキーは谷中で六時三十分』/片岡義男/講談社/1,836円 『ヒトラー演説——熱狂の真実』/高田博行/中央公論新社/950円

静岡新聞

『僕は数式で宇宙の美しさを伝えたい』/クリスティン・バーネット著・永峯涼訳/角川書店/1,836円 『ビリービンとロシア絵本の黄金時代』/田中友子/東京美術/2,592円 『荒野の古本屋』/森岡 督行/晶文社/1,620円 『軍服を着た救済者たち』/ヴォルフラム・ヴェッテ著・関口宏道訳/白水社/2,592円 『津軽 いのちの唄』/坂口昌明/ぷねうま舎/3,456円

東京新聞

『「死」を前に書く、ということ——「生」の日ばかり』/秋山駿/講談社/2,160円 『岩田宏詩集成』/岩田宏/書肆山田/4,860円 『それでも猫は出かけていく』/ハルノ 宵子/幻冬舎 /1,620円 『キャットニップ』/大島弓子/小学館/1,296円 『「本が売れない」というけれど』/永江朗/ポプラ社/842円

日本経済新聞

『地方消滅』/増田寛也/中央公論新社/886円 篠田節子著『長女たち』/新潮社/1,728円 木畑洋一著『二〇世紀の歴史』/岩波新書/929円 朝井まかて著『阿蘭陀西鶴』/講談社/1,728円 角田光代著『笹の舟で海をわたる』/毎日新聞社/1,728円

夕刊フジ

『猟師の肉は腐らない』/小泉武夫/新潮社/1,512円 『父と息子の大闘病日記』/神足裕司・裕太郎/扶桑社/1,296円 『元外務省主任分析官・佐田勇の告白ー小説・北方領土交渉』/佐藤優/徳間書店/1,728円 『最後のトリック』/深水黎一郎/河出書房新社/734円 『不幸な認知症 幸せな認知症』/上田諭/マガジンハウス/1,404円

読売新聞※順不同

『鳩の撃退法 上巻・下巻』/佐藤正午/小学館/1,998円 『トロイアの真実』 / 大村幸弘/ 山川出版社/2,700円 『地方消滅』/増田寛也/中央公論新社/886円 『セラピスト』/最相葉月/新潮社/1,944円 『編集少年 寺山修司』/久慈きみ代/論創社/4,104円 ※新聞、週刊誌、月刊誌、それぞれについて五十音順で掲載

総合週刊誌の書評担当者が選ぶ、最高の本ランキング

サンデー毎日※順不同

『八月の六日間』/北村薫/角川書店/1,620円 『炎を越えて——新宿西口バス放火事件後三十四年の軌跡』/杉原美津子/文芸春秋/1,612円 『イノセント・デイズ』/早見和真/新潮社/1,944円 『やなせたかし おとうとものがたり』/やなせたかし/フレーベル館/1,620円 『追われ者半次郎』/小杉健治/宝島社/756円

週刊朝日※順不同

『日中韓を振り回す「ナショナリズム」の正体』/半藤一利・保阪正康/東洋経済新報社/1,080円 『歴史を繰り返すな』/板野潤治・山口二郎/岩波書店/1,620円 『水声』/川上弘美/文芸春秋/1,512円

週刊アスキー※順不同

『沈みゆく帝国——スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか』/ケイン岩谷ゆかり/日経BP社/2,160円 『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい』/本田哲也・田端信太郎/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1,620円 『教養としてのプログラミング講座』/清水亮/中央公論新社/842円 『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』/デイヴィット・ケリー、トム・ケリー著・千葉敏生訳/日経BP社/2,052円 『懐かしのホビーパソコンガイドブック』/前田尋之/オークラ出版/1,296円

週刊現代※順不同

『怒り 上巻・下巻』/吉田修一/中央公論新社/各1,296円 『さみしくなったら名前を呼んで』/山内マリコ/幻冬舎/1,512円 『暴露 スノーデンが私に託したファイル』/グレン・グリーンウォルド著・田口俊樹、濱野大道、武藤陽生訳/新潮社/1,836円 『教誨師』/堀川惠子/講談社/1,836円 『疒(やまいだれ)の歌』西村賢太/新潮社/1,620円

週刊プレイボーイ

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』/矢部宏治/集英社インターナショナル/1,296円 『イノセント・デイズ』/早見和真/新潮社/1,944円 『街場の戦場論』/内田樹/ミシマ社/1,728円 『境界の町で』/岡映里/リトル・モア/1,728円 『「サル化」する人間社会』/山極寿一/集英社インターナショナル/1,188円

週刊文春

『八月の六日間』/北村薫/角川書店/1,620円 『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』/上原善広/新潮社/2,181円 『ヒトラーのオリンピックに挑んだ若者たち ボートに託した夢』/ダニエル・ジェイムス・ブラウン著・森内薫訳/早川書房/3,240円 『離陸』/ 絲山秋子/文芸春秋/1,890円 『少年アヤちゃん焦心日記』/少年アヤ/河出書房新社/1,490円

週刊ポスト※順不同

『酒場詩人の流儀』/吉田類/中央公論新社/842円 『曽根中生自伝 人は名のみの罪の深さよ』/曽根中生/文遊社/4,212円 『アンダーカバー秘密調査』/真保裕一/小学館/1,944円 『星々たち』/桜木紫乃/実業之日本社/1,512円 『平凡』/角田光代/新潮社/1,512円

総合月刊誌の書評担当者が選ぶ、最高の本ランキング

WiLL※順不同

『異形の維新史』/野口武彦/草思社/1,944円 『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑りつかれた男たち』/上原善広/新潮社/2,181円 『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』/マイケル・モス著・本間徳子訳/日経BP社/2,160円 『死ぬ理由、生きる理由・英霊の渇く島に問う』/青山繁晴/ワニブックス/1,728円 『いま生きる「資本論」』/佐藤優/新潮社/1,404円

クーリエ・ジャポン

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』/矢部宏治/集英社インターナショナル/1,296円 『ツィッター創業物語』/ニック・ビルトン著・伏見威蕃訳/日本経済新聞社/1,944円 『若者はなぜヤクザになったのか』/廣末登/ハーベスト社/3,024円 『女の子よ銃を取れ』/雨宮まみ/平凡社/1,512円 『病み上がりの夜空に』/矢幡洋/講談社/1,620円

月刊宝島

『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』/加藤直樹/ころから/1,944円 『愛と暴力の戦後とその後』/赤坂真理/講談社/907円 『女の子よ銃を取れ』雨宮まみ/平凡社//1,512円 『教養としてのプロレス』/プチ鹿島/双葉社/950円 『弱いつながり——検索ワードを探す旅』/東 浩紀/幻冬舍/1,404円

ソトコト

『わたし、解体はじめました——狩猟女子の暮らしづくり』/畠山千春/木楽舎/1,620円 『外来魚のレシピ——捕って、さばいて、食ってみた』/平坂寛/地人書館/2,160円 ミシマ社『「消費」をやめる——銭湯経済のすすめ』/平川克美/ミシマ社/1,728円 『シャバはつらいよ』/大野更紗/ポプラ社/1,404円 『サルなりに思い出す事など——神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々』/ロバート・M・サボルスキー著・大沢章子訳/みすず書房/3,672円

ダ・ヴィンチ

『紙つなげ!——彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』/佐々涼子/早川書房/1,620円 『かないくん』/谷川俊太郎著・松本大洋 絵/東京糸井重里事務所/1,728円 『シャバはつらいよ』/大野更紗/ポプラ社/1,404円 『怪談』/小池真理子/集英社/1,512円 『江戸しぐさの正体——教育をむしばむ偽りの伝統』(講談社)/原田実/星海社/886円

中央公論※順不同

『海うそ』/ 梨木 香歩/岩波書店/1,620円 『櫛挽道守』/木内昇/集英社/1,728円 『ハンナ・アーレント』/矢野久美子/中央公論新社/885円 『鹿の王 (上)生き残った者・(下)還って行く者』/上橋菜穂子/角川書店/1,728円 『哀しすぎるぞ、ロッパ 古川緑波日記と消えた昭和』/山本一生/講談社/2,592円

日経WOMAN

『絶叫』/葉真中顕/光文社/1,944円 『てらさふ』/朝倉かすみ/文芸春秋/1,998円 『春の庭』/柴崎友香/文芸春秋/1,404円 『怒り 上巻・下巻』/吉田修一/中央公論新社/各1,296円 『出版禁止』/長江俊和/新潮社/1,944円

婦人公論

『夜は終わらない』/星野智幸/講談社/1,998円 『鳩の撃退法 上巻・下巻』/佐藤正午/小学館/各1,998円 『ドミトリーともきんす』/高野文子/中央公論新社/1,296円 『愛と暴力の戦後とその後』/赤坂真理/講談社/907円 『ぺナンブラ氏の24時間書店』ロビン・スローン著・島村浩子訳/東京創元社/2,052円

PRESIDENT※順不同

『井田真木子著作撰集』/井田真木子/里山社/3,240円 『セラピスト』/最相葉月/新潮社/1,944円 『教誨師』/堀川惠子/講談社/1,836円 『静かなる革命へのブループリント——この国の未来をつくる7つの対話』/宇野常寛 編著/河出書房新社/1,620円 『東京タクシードライバー』/山田清機/朝日新聞出版/1,512円

http://dacapo.magazineworld.jp/report/155546/

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